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ハイキュー!! 秋祭りバトン!

第1章 明日も笑おう






「……明日、ウィーンに行くつもりなの」
「…………」
「君のおかげよ。また私は一歩踏み出せる」
「…………」
「だから君の気持には応えられない」
「…………明日の何時ごろ、ですか」
「始発に乗って」
「……そう、ですか」

あまりに急すぎた。
何も言えずに俺はぼんやりとコーヒーから出る湯気を見つめていた。
頭の中にベートーヴェンの「月光」が流れる。
初めて聴いた彼女のピアノ。
どうして今それが流れるのか。
きっと今日が綺麗な満月だから。

「じゃあ、気を付けてね」
「はい。さんも気を付けて」

月が綺麗な夜。
俺達はもう二度と会えない。
そんな気がした。

彼女に背を向け、歩き出した時彼女が俺の名前を呼んだ。

「要くん」

いつもは"苗字"か"君"と呼ぶのに。
思わず振り返ると、彼女は泣いていた。
どうして泣いているのかわからない。

「要くん、君の優しさに私は救われていたの。ありがとう。……好きだったよ」

伝えたいことがあった。
言いたいことがあった。
でも、言葉にできない。
涙が溢れて、うまく話せない。

「知ってましたか、さん」
「ん?」
「星っていつだってさんの頭の上で輝き続けるんですよ」
「!!ふふっ、そうだね」

優しく微笑む彼女を見て、俺を笑った。

もっと他に言いたいことはあった。
だけど、言葉が出て来なかった。

帰り道。
頭上には満天の星と大きな丸い月が浮かんでいる。
頭に流れる「キラキラ星」

彼女が教えてくれた。
就職活動がうまく行かなくて落ち込んでいる時。
テストの点数が良くなくて落ち込んでいる時。
必ず彼女はこの曲を弾いてくれた。
そして弾き終わった時に言ってくれる一言が、胸に焼き付いて離れない。

「星はいつだって君の頭上で輝き続けるんだよ」

きっとこの言葉は貴方の心も救ってくれる。

「Twinkle twinklr little star.How I wonder what you are」

涙交じりの歌声は、遠くの空へと消えて行った。
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