第2章 # 00008B
「なぁ。コレ、調子悪いみたいなんだけどさぁ
ちょっと見てくれよ」
後ろから声をかけられてハッとする
「ココに皺、寄ってる
まぁた難しい事考えてたんだろ?」
「そんなんじゃないよ
どれ? 貸してみて」
難しい事を考えていたわけじゃないけど、この時期になると特に色濃く思い出す
あ。エアーブラシが目詰まり起こしてる
だからたまには手入れしなよって言ったのに
「レンチとクリーニングロッド。それからラッカーシンナー持って来て?」
「あら? まさか俺、またやっちゃった?」
「そう。そのまさか。」
「だってさぁ。苦手だし、そーゆーの!
智のが得意じゃん。
それに俺、一度分解したら元に戻せる気がしねぇもん」
「それもそうだな」
持つべき物は手先の器用な相棒だな!と頭をグリグリされた
「んじゃ、宜しく♪」
道具の入ったケースを僕の目の前にドン、と置いて
自分は涼し気な顔してソファーに大の字になって座ってる
…まぁ、いいけど。
「なぁ、智」
「んー?」
「もうすぐ梅雨だな」
「…あぁ、そうだね」
「……あれから15年…か、」
「……」
…そう、あれから。
あの日、カズを騙して失踪してから15年の月日が経とうとしていた