第2章 # 00008B
「一段落着いた事だし出掛けるか」
「出掛けるって何処に?」
「塗料買わなきゃだし、達兄のとこにも顔出したいしさ」
達兄こと達也さんは、慎吾の従兄弟で。
うちの工房のボードを置いてくれてるだけじゃなく、お客さんの仲介までしてくれてる
頼れる兄貴のようで、それでいて少年のような無邪気な人。
海とサーフィンを心から愛してる人。
「じゃあココ片付けとくから慎吾は着替えてきなよ」
「おぉ、助かる!」
スキップしそうな勢いで階段を駆けて行く背中を見つめながら、慎吾が見事に散らかした仕事道具を丁寧に片付けた
「智ってさ、色彩認識能力が極端に高いんだろうな」
青色ばかりを何箱も箱買いしながら慎吾が言う
「なんで?」
「サトシブルーの配合が完璧だからだよ
俺じゃ絶対真似出来ないもん」
「だから、サトシブルーって言うなって」
確かにあの色は僕にしか作り出せない自信がある
他人が見ても気付かない程の色の違いに絶対のこだわりがあった
「俺、あの色凄ぇ好き」
真っ直ぐな慎吾の言葉がストレートに響く
「それはそれは」
照れ隠しにペコリとお辞儀をしてみせたけど
好きなものを好きとハッキリ言える慎吾のその素直さが
僕も大好きだよ