第2章 # 00008B
仕事モードの慎吾は別人かと思うくらいの集中力で
工房の中に響く、塗料を吹き付けるエアーブラシの音を背中越しに聞きながら
他人が見たら落書きに見えるだろう、次のデザインをスケッチブックに走らせていた
「イイねぇ、最高!
どう? 智!」
作業マスクをしてるせいでくぐもった声に賛同を求められて
振り返ってその出来栄えをじっくりと観察してから
「バッチリ。最高だよ」
同じように親指を立てると、慎吾は目尻に皺を寄せて子供の様に微笑んだ
「Constellationシリーズ、かなり人気だって達兄が言ってた。
勝因はやっぱこの色でしょ
この、サトシブルー。」
「バカ、サトシブルーって言うな」
確かにここ最近の受注はConstellationシリーズが多いと思う
「はいはい、 # 3104 ね」
# 3104 (シャープ サンイチゼロヨン)
それが、僕が作った青色のカラーコードだ
「ホント、キレイな色。惚れ惚れする」
「うん。キレイだね」
塗り終えたばかりのサーフボードを立てかけて
僕達は暫くその余韻に浸った
オリジナルのデザインと納得の行く色を極めたい僕と
忠実に再現する事へのこだわりを持つ、慎吾
揺るぎない個性を持つ二人の少年は、大人になってからもそこは変わらず
小さな海街でひっそりと
サーフボード工房【LOL(ロル)】を始めたんだ