愛慾の鎖ーInvisible chainー【気象系BL】
第5章 一栄一辱
僕は男の手をもっと奥へと誘いこむように、掴んだ腕を引き寄せた。
でも、
「だめだと言ってるだろう?‥聞き分けのないことを言う子は、お仕置きをされるんだよ」
僕を諌める声が耳元に囁きかける。
”お仕置き”と言う言葉に、僕の背中に冷たいものが伝う。
結局僕はこの男には敵わないのか‥
いや、まだだ‥
堕とされる前に堕とせばいい‥
僕はゆっくり身体を起こすと、
「お仕置きは‥いや‥」
薄く開いた瞳に欲の色を纏わせ、男を惑わせる遊女のように、男の下腹部に手を添えた。
一度たりとも僕に触れようとしないそれに‥‥
「僕は貴方が欲しいだけなのに。いつまで経ってもくれないんですね‥」
こんなに僕が求めているというのに‥
僕は舌なめずりをすると、男の着物の裾を割り、その奥へと手を滑り込ませ、形すらかえようとしない膨らみをその手で包み込んだ。
そして、食事の時間だからと、この場を立ち去ろうとする男を逃がすまいと、男の着物の裾を捲り上げ、僕の小さな手からは包みきれない男の塊を、ゆるゆると扱き始めた。
以前は自分の物でさえ、触れることさえ躊躇っていたのに、それが今ではどうだ‥
目の前の男を我が物にするために、いつしか覚えた手淫を駆使しているなんて‥
こんな姿を父様や母様がご覧になったら、なんて思われるだろう‥
やっぱり軽蔑されるのかな‥
でも、それでもいい。
この男を‥松本に関わる全て者を地獄へと堕とすためなら、僕は何だってする。
例えこの黒く染まった手を血で染めたとしても‥
「くっ‥‥」
小さな呻きを漏らし、男が一瞬顔を顰める。
気付けば、僕の手の中の塊は、僕の手では包み切れない程に大きさを増していて‥
膨らみを締め付ける下帯をしっとりと濡らし、窮屈そうに押し上げていた。
「ふふ‥、大きくなってきましたね? とても苦しそう‥」
この男にとっては、屈辱的とも取れるような言葉を投げかけ、下帯の横から指先を滑り込ませると、熱く滾った男の塊に直に触れた。
そして、
「お仕置き‥してくださるんでしょ?」
潤ませた瞳で小首を傾げた。