愛慾の鎖ーInvisible chainー【気象系BL】
第4章 落花流水
和也said
「ここにね、君はいるんだよ。そして私も。わかるかい?」
地球儀だと言ったその丸い玉がその回転を止め、一点が指さされる。
こんな小さな玉の上に、俺達が・・?
もう少し俺に学があれば、大して難しいことでもないのだろうけど・・
教育なんてものを受けたことのない俺には・・分からないや・・
「この玉のここに?・・じゃあ他はどうなってるんです?」
俄に信じられなくて、俺は疑問だらけの視線を相葉雅紀に向けた。
すると相葉雅紀は俺を肘掛け椅子の隣に座らせ、一冊の本を俺の膝に広げた。
そして一枚、また一枚と頁を捲る度に、俺にも分かるように聞かせてくれる話は、どれも興味深くて・・
俺はしきりに相槌を打ちながらも、食い入るように異国の風景を見詰めていた。
だって、異国の地があるなんて、今まで知らなかったから・・
でも・・
日頃の疲れが溜まった身体には、優しい語り口調がまるで子守唄のように聞こえて・・
一生懸命に耳を傾けるけど、それでも俺を丸ごと包んでしまうような温もりには抗える筈もなく・・
気付ば、重たくなった瞼を、ぴたりと閉じていた。
温かい雅紀さんの肩に寄りかかるようにして・・・・
いつもと違う、柔らかな温もりに包まれて、俺は閉じていた瞼をゆっくりと開いた。
えっ・・、どうして・・・・
まだ覚めきらない視界に、映ったのは穏やかな寝息を立てる相葉雅紀の顔で・・
俺は慌てて身を起こすと、軽く頭を振ってから、記憶の糸を辿った。
そうか、昨日本を見せて貰って・・
それから・・
その後の記憶が、どうしたって思い出せない。
俺は相葉雅紀を起こしてしまわないように、そっとその腕から抜け出すと、ふわりと軽い綿飴のような布団を捲った。
その瞬間、俺は全身の血が引いて行くような・・
そんな感覚を覚えた。
何故なら、俺の穿いていた筈の袴はなく、肌蹴た着物の裾からは、自分でも嫌になるくらいの、白い足が覗いていたから・・
まさか俺、この人と・・?
いや、そんな筈はない。
だってそんな痕跡どこにも・・・・
じゃあどうして俺はこんな格好で、この人の寝床に・・?
考えれば考える程、俺は頭の中が真っ白になるのを感じた。