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愛慾の鎖ーInvisible chainー【気象系BL】

第13章 雲外蒼天


智side


「雅紀さん…あなたは僕の大切な人…」

そう言った僕の言葉に、偽りはなかった。


もしあの幼い日、桜の木の下で泣いている僕を見つけてくれなかったら…

両親を一度に亡くし、幼いながらに失意の中にいた僕を拾ってくれなかったら…

僕は今こうして生きてはいなかったのかもしれない。


貴方はいつだって僕に沢山の愛情を注いでくれた。

それなのに僕は貴方を裏切り、そして傷付けた。

一番酷いやり方で…

でもそんな僕を、貴方は許し、深い闇の底から救い出してくれた。


貴方にどれだけ救われたか…


「ありがとうございます」

僕は雅紀さんに対する全ての思いを、その一言に込めた。


そんな簡単な言葉じゃ足りないのに、それ以上の言葉がどこを探しても見つからなくて…

僕は扉が開かれると同時に馬車から飛び降り、雅紀さんに向かって深々と頭を下げた。

そうする以外に、今の僕には雅紀さんに対する恩義を返す方法が見つからなかった。

すると雅紀さんは僕の髪を撫で、一言…

「幸せにおなり?」

そう言って、太陽よりも眩しい笑顔を僕に向けてくれた。

いつだって僕を優しく、そして暖かく包み込んでくれた笑顔を…


「はい。雅紀さんも…」

僕では与えて上げられなかった幸せを、和也と…


「勿論だよ。君に負けてはいられないからね?」

「ふふ、僕だって負けませんよ?」

「智の口からそんな言葉が聞けるとはな…。随分と逞しくなったようだね」


雅紀さんが玄関先で僕達を待ち受ける二人に視線を向ける。

そして小さく肩を竦め、

「さあ、これ以上二人を待たせると後が怖いな。嫉妬の炎に焼き尽くされたそうだ」

笑いを含んだ声で僕に耳打ちをすると、二人に向かって右手を上げた。
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