愛慾の鎖ーInvisible chainー【気象系BL】
第13章 雲外蒼天
雅紀side
緩やかに開かれた鉄扉を通り抜けると、小窓の外に見える鮮やかな緑に覆われた広大な景色に、隣に座っている智が僅かに身を固くする。
「大丈夫かい…?」
私たちがこの場所に足を踏み入れるのは、誰もが自分たちの内なる想いに掻き乱され、運命を哀しさを知ったあの日以来だった。
羽織の裾を握り締めた彼の手が微かに震えていて、それを治めてやろうと自分のを重ねる。
するときつく結んでいた唇が僅かに緩み
「すいません…、心の用意はしてたんですが…」
拭いきれない後悔からなのか、智は少し辛そうな声を洩らした。
「無理もない。まだ日も浅いことだし、時間が経てば心持ちも変わる時がくるだろう。急ぐことはないよ」
そう慰めの言葉を掛けると、智は黙って頷き、小窓の外へと視線を移した。
その先には緑の中に白い大きな洋館が翼を広げたように佇み、今にも青い空へと羽搏いていきそうに見えた。
「いよいよなのだな…」
私は誰に語り掛けるという訳でもなく、間近に迫るひと時の別れにこみ上げてきた想いに胸が熱くなる。
これでもう…本当に私の役目は終わった
小窓の外を…
未来の風景に心を奪われていた私は、智が振り返っていたのに気がつかず、不意に視界を遮った影は柔らかな春風のように頬に触れ…
「雅紀さん…あなたは僕の大切な人…」
小鳥の囀りのような囁きが、唇を撫でた。
私の初恋は…柔らかな陽射しに解け
美しい絵となった