愛慾の鎖ーInvisible chainー【気象系BL】
第13章 雲外蒼天
翔side
「昨日、和也に持たせた手紙に認めていたことなんですが、智も承諾してくれたので、改めてご報告をと思いました。」
これまで智のことを大切に守ってきてくれた雅紀さんには、きちんと報告しなければと思った。
そしてずっと智の身を案じて支えてきてくれた和也も安心させてあげなきゃ、と。
すると、それまでとはうって変わって姿勢を正した雅紀さんは、改まって話すおれを静かに見つめて
「そうか…、二人で決めたことなら異論などあろうはずもない。葉山なら…静かに暮らせるだろう」
智へと視線を移すと、安堵したような微笑みを浮かべる。
「ええ、海がとても美しい場所だと聞いています」
おれはまだ行ったことはないけれど、夜空の星が水平線まであって、砂浜の綺麗な場所だと兄さんが話してくれた。
それを聞いた智は、そんな景色の場所へは行ったことがないって、とても驚いたていた。
だけど、葉山は遠い…
おれの進学を知ってる雅紀さんも
「では…しばらくは離れて暮らすことになるのかい?」
やはり、それを案じている様子で。
その隣に座っている和也は、心配そうにおれ達のことを順繰りに見つめている。
けれど
「はい、私が大学を卒業するまでは…。その後はどんな形になるかはまだ分かりませんが、智と一緒に暮らせるようにしたいと思っています」
おれは絶対に掴んだ手は離さないんだと言わんばかりに、繋いだ手に力を込めた。
するとそんなおれを見つめていた智は、静かにそれを受け入れるように微笑む。
さっき交わした約束は、これからのおれたちを支えてくれる。
そう思えるような穏やかな笑みだった。
それを見ても尚、心配性な雅紀さんは
「智はそれまで寂しくはないだろうか…?和也は寄宿舎に入ってしまうことになるし…一人になるのは初めてだろうに」
どうしても、それだけが気懸りな様子だった。