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愛慾の鎖ーInvisible chainー【気象系BL】

第13章 雲外蒼天


和也side


まさか智さんが俺と雅紀さんの睦言を聞いていたなんて露とも知らない俺は、後数刻で正午を迎える頃になって漸く目を覚ました。

流石に雅紀さんの姿は部屋になく…、俺は丁寧に畳んで揃えられた自分の着物に着替えると、少々重い腰を擦りながら階下へと降りた。

すると廊下の奥の方から聞き覚えのある声が聞こえてきて…


えっ、まさか…


俺は早足で声が聞こえた部屋に向かった。

「ぼ、坊ちゃん…、どうしてここに…?」


確か迎えは不要だからと、ちゃんとお断りした筈なのに…

俺の思い違いだったのだろうか…


そんなことを考えていると、それまで背を向けていた坊ちゃんがゆっくりと俺を振り返り、

「どうしてかとおれに訪ねる前に、寝坊を詫びるべきではないか?主よりも遅く起きるなど、言語道断。けしからん!」

般若のように目を釣り上げ、坊ちゃんが言った。


言われてみればそうだ、いくら昨夜寝かせて貰えなかったとはいえ、この時間は流石にまずい。

しかも雅紀さんは既にお目覚めで、身形だってちゃんと整えられていて…


「も、申し訳ございません!つい気が緩んでしまったようで…。何とお詫びして良いものやら…」

俺は廊下に両膝を着くと、額が擦れるくらいに頭を下げた。


ああ、俺としたことが、こんな失態をするなんて…


我が身の不徳を必死で詫びた。

その時、どこからともなく…

「く、くくく…」

と、笑い声が聞こえてきて…

「やれやれ、私の可愛い恋人を虐めるのはそれくらいにしてくれないかい?」

えっ、と顔を上げた俺の視界に飛び込んで来たのは、必死で笑いを堪える三人の顔で…

「も、もしかして私今、揶揄われた…んでしょうか?」

「ごめんごめん、ついついね…」

「ついって…」

「まあまあ、お巫山戯はそれくらいにしておいて…、和也も揃ったことだし、翔君、君の話を聞かせて貰おうか?」

一転真剣な表情(かお)をした翔坊ちゃんが、隣に座る智さんの手をきゅっと握った。
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