愛慾の鎖ーInvisible chainー【気象系BL】
第13章 雲外蒼天
胸の前で結ばれた手に、そっと手を重ねる。
固く結ばれた手は、きっと翔君がそれだけ真剣だ、ってことだよね?
「俺が大学を卒業するまで、待っていて欲しい。も、勿論、その間に智が心変わりしたら…その時は俺のことなんて綺麗さっぱり忘れてくれていい。だから待っていてくれないかい?」
思慮深い翔君のことだから、きっと僕が思っている以上に思い悩み、考えた末に出した答えなんだろうね?
それなのに僕が翔君の思いを、どうして断ることが出来るだろう…
「駄目…かな?」
駄目なんかじゃない…
そう答えたいのに、胸が詰まって上手く声が出ない。
どうしよう…
どうしたら、僕の思いを翔君に伝えられる?
どうすれば…
「済まなかったね、突然こんな話をされても、どう答えていいか分からないよね?ごめん、急ぎ過ぎたみたいだ…」
翔君の手が僕の手の中から離れて行く。
駄目…、離さないで…
僕を…
「嫌…」
「えっ…?」
「離さないで…。僕を離さないで…。僕待ってるから…。翔君が大学を卒業するまで…ううん、何年でも何十年でも、僕は待ってるから…。だから僕を二度と離さないで…。愛してる…、翔君を…心から愛してる…。だから…っ…」
言葉の先を遮るように、翔君の唇が僕の唇を塞いだ。
翔君らしくない、荒々しい…でも熱くて感情を剥き出しにしたような口付けに、涙が溢れ出す。
「泣かないで?」
唇が離れ、翔君が指の腹で僕の涙を拭う。
でも僕の目からは涙が次々溢れて…
「ああ、どうしたら泣き止んでくれるんだい?」
翔君が困ったように眉を下げ、一度は解きかけた腕を再び結ぶ。
今度は重ねた僕の指に指を絡めて…
「もっと…、もっと強く抱いて?」
「こう…かい?」
強請る僕に応えるように、翔君の腕が僕の身体をきゅっと強く抱きしめる。
それでも僕はまだ足りなくて…
「ううん、もっとだよ…?」
僕の身体が潰れてしまうくらいに、強く…