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愛慾の鎖ーInvisible chainー【気象系BL】

第13章 雲外蒼天


「もしも…なんだけど、智が嫌じゃなかったら…なんだけど…」

一つ一つ言葉を選んでは口にする翔君。

でもいつになくはっきりとしない口調に、ほんの少しの不安を感じてしまう。

「それは…、僕にとって悪いことなの?それとも…」

「違う、そうじゃなくて、一緒に暮らさないかい?」

翔君の手が僕の手をきゅっと握る。

それでも翔君の真意が飲み込めない僕は、翔君の目をじっと見つめて、首を傾げた。

「誰と誰…が…? どこで…?」

きっと酷く間の抜けた顔をしているんだろう…、翔君が僕の顔を見てぷっと吹き出す。


笑わなくたっていいのに…


僕はふうっと顔を膨らますと、拗ねたように唇を尖らせた。

「ごめんごめん、もう笑ったりしないから、そんな顔をしないでおくれ?」

言いながらも、翔君の肩は揺れ続け…

「も、もう…、翔君の意地悪…。ちゃんと言ってくれないと分からないよ…」

僕は身体をくるりと反転させると、翔君に背中を向けた。

すると僕の肩から外套を纏った腕がするりと伸びて来て、僕は翔君の腕の中に抱き留められた。

首筋に触れる毛先が擽ったい。

「俺と智に決まってるでしょ?俺と智とで、葉山の別荘で暮らさないか?」

「僕…と翔君とで…?二人で…?そんなこと出来るの?だって翔君は…」

次男とは言え、これから松本家を支えて行かなくてはいけない人なのに、そんなことが簡単に叶うなんて、思えない。

それに、あの潤がなんて言うか…

「兄さんのことなら心配いらない。それに家のことも。ただね…」

「ただ…、何…?」

「俺、どうしても大学までは出たいんだ。そうでなければ、本当の意味で兄さんのことも、それから会社のことも支えられないと思うんだ。何より、今のままの俺では、智を守れないような気がして…。だから…」

「うん…」

頷いた僕の頬に、翔君の頬がぴたりとくっつく。

「いいよ、言って…?だから…、何?」


僕は翔君が決めたことなら、何だって受け入れるから…
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