愛慾の鎖ーInvisible chainー【気象系BL】
第13章 雲外蒼天
愛しい人の胸に顔を埋め、まるで幼子(おさなご)が駄々を捏ねるように、開いた寝巻きの襟を掴む。
するとそれに応えるかのように、雅紀さんの片腕が俺の背中に回り強く抱き締められた。
より強くなった密着度のせいか、湯上がり後の素肌から香る体臭が俺の鼻先を擽る。
ずっとこうしていたい…
出来ることなら、しっとこの腕の中に包まれていたい…
勉学のため…、そしていつか愛しい此の方と肩を並べて歩くため…、そのために寄宿舎に入ることを決心したのに…、今はその決意すらも恨めしい。
「待っていて下さいますか? 私が立派な男になって戻って来るまで…、待っていて下さいますか?」
「待とう…。和也自身が納得出来る大人になるまで、私は待とう…。ただ…」
「ただ…、何です?」
見上げた視線の先で、雅紀さんが苦笑する。
「ただ、そう長くは待てないかもしれないね…。だから約束してくれないだろうか、月に一度は私とこうして床を共にしてくれると…」
「はい、勿論…。だから…今夜は存分に抱いて下さい…」
雅紀さんの身体が俺を忘れないように…
俺の身体が雅紀さんの身体を忘れないように…
身も心も共にあるということを、俺のこの身体に刻み付けて欲しい…
「ふふ、今宵は寝かさぬが…それでも良いか?」
雅紀さんの指が、頷く俺の顎先にかかり、ゆっくりと唇が重なる。
そして肌を滑る手に、寝巻きの帯が解かれて行く。
その間も、俺の視線は雅紀さんの姿を捉えたままで…
「そんなに見つめられたら、穴が空いてしまいそうだ…」
珍しく恥じらいを見せる雅紀さんの様子に、笑みが零れてしまう。
「だって目に焼き付けておきたいんですもの…、雅紀さんの姿を…」
今度こうして雅紀さんのさんの腕に抱かれるのは、一月先…
その間に忘れてしまわないように、しっかりと…
「何と健気な…。ああ、愛しているよ、和也…」
「私も…、愛しています…」
心から…