愛慾の鎖ーInvisible chainー【気象系BL】
第13章 雲外蒼天
そんな彼を伴って、何度か訪れた西洋料理店で夕食を済ませると、すっかり暗くなって街灯だけが頼り夜道を歩く。
傍らを共に歩く和也は、小さく身を縮こませ気の毒なほどの寒がりようで
「帰ったら、ゆっくり風呂で温まるといい」
見かねた私が、そう言いながらも含み笑いをしてるのに気がつくと、
「では…雅紀さんの後に…」
がたがたと震えているくせに、精一杯の強がりをいってみせる。
「そうだね。温もった和也を湯たんぽ代わりにするのも悪くはない」
「ゆ、湯たんぽ…ですか…」
幼さとは違ったその様子が可愛らしくて、つい揶揄ってしまうと、彼は情け無い顔で私を見上げていた。
「あの…私は本当に湯たんぽのままなんでしょうか…」
帰り道に話していた通り、湯上りの身体を胸の中に抱いていると、落ち着かない様子で身動ぎをしていた和也が徐に口を開く。
そんな気は毛頭なかったものの、久しぶりの逢瀬を余程心待ちにしていたのか、彼の方からせがむような言葉が洩れた。
「こうしていると温かいだろう…?」
私は愛おしい人を囲い込んだ腕に、少しだけ力を込める。
すると彼は腑に落ちないような顔になって
「…はい…確かにそうですけど…」
少し不満そうな声を出す。
「くくっ…、それとも和也は他に、温かになる方法を知っているのかな…?」
その様子を更に面白がるように言うと、流石に揶揄われていることに気がついたらしく、はっとした表情になり、頬を赤く染めた。
「雅紀さんの意地悪…。折角、こうして会えたのに揶揄うなんて」
「揶揄うだなんてこと、する訳ないだろう?」
「だっていつもなら雅紀さんが…」
和也はそこまで言いかけると、薄闇でもわかるほど情欲に濡れた瞳で、私を見つめた。