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愛慾の鎖ーInvisible chainー【気象系BL】

第13章 雲外蒼天


潤side


澤がそんな風に俺を見ていただなんて、考えも及ばなかった。


俺はあの男は勿論のこと、慾に溺れ裏切りの片棒を担いだ澤だって同罪だと思っていた。

しかもそれだけでなく、愛憎の果てに人殺しまで犯した男を庇い続けていたなんて…

醜いことから目を背け、口を拭っていた澤を心底許せないと思っていたのに、あの女は俺を動かさんが為に、自らの手を汚した。


まるで贖罪を乞うように…

己の罪を断罪するかのように、あの男に刃を向けた。


俺はそれほどまでして救われなきゃならないほど鬼畜と化していたことに愕然となっていた。



すると弟は、そんな俺に

「どうして…智を…閉じ込めたり、してたの…?」

何故鬼畜の如き振舞いをしたのかと、悲しげに顔を歪めて聞く。


「…呼び捨てか。いつの間に親しくなってたのかしらんが、そんなこと…聞いて、どうする…」

「だって、智は泣いてたから…」

「あいつにここに来たのは何らかの魂胆があるからなんだろうっていうのは、最初から解ってたさ…。だが俺は浅ましい慾を満たし、何かを奪い取る為だと思っていたから、飽きるまで弄んでやるつもりだった」


最初は、それだけだった。


「…慾を……弄ぶ…」

「ああ、慾を剥き出しにしてたからな。無慾なおまえには解らんだろう。挑戦的で…そのくせ寂しそうな目をしていた」

理由のわからないそれは俺を苛立たせ

「だから俺はそんな無抵抗な智に…全てをぶつけた」

「どうして…そんなことを…」

「あいつは自ら檻に飛び込んできたんだ。まぁ、それなりの覚悟があってのことだったっていうのは、ついさっき知ったばかりだったがな…」


親の仇を討つなどと馬鹿げたことの為に、仇の息子に身体を差し出すという愚行に走った愚かな男…

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