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愛慾の鎖ーInvisible chainー【気象系BL】

第12章 以毒制毒


翔side


雅紀さんは少しだけ二人と言葉を交わした後、そっと大広間を出て行った。

でも主宰者のおれは身動き一つ満足に取れずに、手をこまねいて見ていることしかできない。


兄さんはどういうつもりで智を…?


不自然にならないよう、祝辞をくれる学友達と話しながらも、視界の端には智の姿を捉え続けて。

彼は兄さんに肩を抱かれ、すれ違う人々の視線に晒されていた。


あれでは完全にさらし者じゃないか…


さらし者……

まさか…、それが兄さんの目的…?


人の集まる祝宴という場所に智を連れ出して、誰にも手出しができないようにするのが目的だった…?


それって…

兄さんがそれだけ強く智に執着してるって事だ…

いきなり祝言を挙げろって言った父様が来られることも分かってての…当て付け?


どっちにしたって、兄さんの我が儘だ。


智は人形じゃないんだ…!


嬉しかったり、悲しかったり…

痛みだって感じる…

おれたちと同じ、意思を持った人なのに。



身の置き所が無いように小さく縮こまる智を見てはいられなくなり、傍に行こうと足を踏み出す。


するとその時…

広間の一角の空気がざわりと揺れた。


もしかして…父様がいらっしゃった⁈


はっとなり兄さんの方を振り返ると、ぞくりとするような冷たい笑みを浮かべて、その一角を見つめている。

そして何かを智の耳元で囁いて。

耳打ちされた智の目は大きく見開かれ、その一角に顔を向ける。


優しげな瞳は、一瞬にして全てを焼き尽くしてしまいそうなほどの憎しみに染まり、小さな身体が憎悪に包まれるのが見えた。



おれの父様は智の仇…

兄さんはそのことを知らない。


図らずも智は宿敵とも言える相手と顔を合わせることになってしまう。


そんなこと…

誰も…


智自身だって…望んでなかったのに

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