愛慾の鎖ーInvisible chainー【気象系BL】
第12章 以毒制毒
雅紀side
こんなにも痩せて…
鎖に繋がれ囚われの身となっていたという私の宝物
悔しくて…、悲しくて…
私は大切にしていた者を傷つけられたように感じ、激しい憤りを覚える。
「まさ‥き‥さん‥」
泣き出しそうな瞳で見つめ返す智を、腹心の友の手から奪い返してしまいたい衝動に駆られた。
すると釣られて振り返った松本は
「やあ、雅紀…、お前も来ていたんだな」
私が声を掛けることも織り込み済みだったのか、動じる様子もないどころか、笑みさえ浮かべていた。
「ああ…翔君とは親しくさせてもらっているからね」
彼がどういうつもりで智をこの場に伴わせているのかが分かるまでは、迂闊なことを言わないよう…言葉を選んで。
「そうだな…、翔のことは俺以上に可愛がってくれていたようだし…、兄として礼を言うよ」
「いや、そんなことは無いが…」
松本も私の出方をうかがっているのか、自分から智のことに触れることは無いものの、肩を抱く手を外すこともしなかった。
どうしたものか……
このまま指を咥えて見ていては、全てが水泡に帰してしまう。
一か八か…勝負に出てみようか…?
私は思いきって智の方に視線を向けると
「久しぶりだね…智、元気にしてたかい?」
不安に揺れる瞳に微笑みかけた。
「は、はい…、雅紀、さんも…お変わりないようで…」
「そうだね…、一つ歳を取ったくらいかな」
「あ…、そうでしたね…」
ぎこちないながらも、智は私と話を合わせようと懸命に答えてくれる。
不安で堪らない…
そんな表情だった。
このまま隙をみて連れ出してしまおうか…。
そんなことを思いはしたものの、智をここに連れてきた松本の思惑がわからないままでは、どうにも危険なことのように思え
「ゆっくりと話しをしたいものだが…、ここでは難しいようだね」
せめて和也から事の成り行きを聞いてからと…
伸ばしかけた手を…ぐっと抑え込んだ。