愛慾の鎖ーInvisible chainー【気象系BL】
第12章 以毒制毒
翔side
血相を変えた和也に呼ばれて学友達の輪から外れると、
「潤坊ちゃんが、さ、智さんをこちらに…っ」
耳打ちされて…
「え…っ?」
我が耳を疑った。
だってそんなこと有り得ない。
自分の部屋に鍵を掛けてまで人目に付かないようにしてたのに、こんなに大勢の人が集まる場に連れて出たりする訳ない。
しかももうすぐ父様だってこられるっていうのに…
おれは和也の流した視線を追い、人が集まる輪の中に兄さんの姿を見つけた。
そしてその隣で人の視線を避けるように目を伏せた智が、まるで見えない鎖で繋がれているかのように佇んでいた。
どうして…今更……
目を疑うような光景に頭の中が真っ白になって、咄嗟に言葉も出なかった。
「どうして…こんなことに…」
「私も何も聞いてなくて…、智さんもどうしていいがわからないらしくて」
「と、兎に角…雅紀さんにこの事を…」
おれたちだけではこの先どうしたらいいのか分からなくて、雅紀さんと相談しなくちゃって思ったその時…
異変に気がついた彼は、二人の方に向かって歩き出していた。
「雅紀さん…、大丈夫でしょうか…」
足取りこそゆったりとしているものの、兄さんを真っ直ぐに見据える瞳は真剣そのものだった。
「大丈夫だよ…きっと。おれは少し様子を見てから兄さんに声を掛けるから、和也も智から目を離さないようにしておいて」
不測の事態だ……
智は部屋で雅紀さんが来るのを待っているつもりが、こんな所に連れてこられて、どうしていいか分からない筈。
それでも、ああして踏み止まってる…
おれだって…驚いてばかりもいられない。
兄さんの部屋の扉に鍵を掛けたあの時
智と約束したんだ…
今日、必ずこの屋敷から連れ出してあげるって…
その為だったら…どんなことでもしようって心に決めたんだ。
もう……後に引くつもりはない