愛慾の鎖ーInvisible chainー【気象系BL】
第12章 以毒制毒
智side
潤に引き摺られるまま廊下へと出た僕は、何とかその腕を逃れようと、必死で身を捩った。
でも僕よりもうんと体格の良い男の前で、僕のか細い腕が太刀打ち出来る筈もなく‥
「いい加減観念したらどうだ?自由にしてやると言っているのが分からないのか?」
壁に背中を押し付けられ、身動きの取れなくなった僕の顎に、潤の手がかけられる。
「いらない‥、僕は自由なんて、いらない‥」
欲しいのは翔君との幸せな未来だけ‥
それ以外の物は、それが例え天高く積み上げられた札束であろうと、僕はいらない!
「後生です‥、どうか僕をお部屋に‥」
両手を擦り合わせ、涙ながらに懇願する。
でも潤は口元を不敵に歪め、僕の顎にかけた手を下へとずらして行くと、襟元で蝶々型に結ばれた襟紐の端を掴み、ゆっくりと解いていった。
「何‥を‥」
「何を、だと?くくく、言うまでもなかろう。情夫には情夫らしく、相応しい身形をさせてやろうと言っているのだ」
思い通りにならないことへの怒りなのか、それともこの状況を愉しんでいるのか、冷たく見下ろす潤の目には、笑みさえ浮かんでいる。
「潤‥さ‥ま‥」
背中を、冷たい物が伝って行く‥
身動き一つ出来ず、釦が一つずつ外されて行くのを、ただ見開いた両の目から涙を零す僕の唇を、潤の冷えた唇が塞いだ。
その時、階下が俄に騒がしくなり、所々で小さな歓声と拍手が巻き起こった。
「どうやら主役のお出ましのようだな‥。どうする、素直に俺の言うことを聞くか、それとも‥」
釦を全て外された上衣が開かれ、所々に赤い痣の残る肌が外気に晒された。
「これ以上俺を困らせるなら、観衆の前に醜態を曝すことになるが‥」
「そん‥な‥」
「それとも何か?この場で犯してやろうか?」
まるで氷のような指先が僕の胸の先を捻り上げる。
いや‥、やめて‥
こんな姿を翔君に見られたら、僕はもう‥生きていられない‥
「分かり‥ました。潤様の仰せの通りに‥。だからお戯れは‥」
「ふん、最初からそう言えば良いものを‥。分かったら早く身形を整えろ」
ごめん、翔君‥
和也も、雅紀さんも‥、ごめん‥
所詮僕はこの男には逆らえないんだ。