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愛慾の鎖ーInvisible chainー【気象系BL】

第3章 兎死狗烹


和也side


気付かれた‥‥!


手首を掴まれた瞬間、心臓が大きく跳ねあがって、激しく脈を打ち始める。


いや、でも問題はそこじゃない‥

どうしてこの人が俺の存在(こと)を?
まさか見られていた?

そんな筈はない。

そうだ、上手くやっていた筈だ。
心配することなど何も無い‥



「‥一体なんのお話のことなのか‥お人違いでは‥」


痛いほどに強く打ち付ける鼓動を鎮めようと、そっと瞼を伏せ、俺の手首を掴んだ指を解く。

大丈夫‥大丈夫だ‥‥

心の中で繰り返しながら‥


「すまなかった‥私の思い違いだったのかもしれない」


良かった・・
気付かれてない・・・・


唇の端だけを僅かな上げ、苦々しく笑う男の姿に、心底安堵する。


「・・いえ・・そんなことは・・」


でもまだ安心するのは早い。
早々にこの場を立ち去らなければ・・

なのに、どうしたことだ・・
足が床に貼り付いてしまったかのように、動かない・・


「・・・・少しだけ・・話し相手をしてくれないか・・?一人にはなりたくなくてね・・」


どうして俺が・・


それに階下(した)ではあの人が待っているのに・・
智さんを一人にするわけにはいかないのに・・


それなのに、俺はこの情けなくも惨めな男の・・相葉雅紀の頼みを断る事が出来ず・・


言われるまま椅子を寝台の横に引き寄せるが、


「やはり・・使用人の私が椅子に座るのは・・」


そこに座るのは、やはり幅かられて・・

一旦は下ろしかけた腰をすぐに上げようとした。


でも・・、


「気にしなくていい。私がそうしてくれと頼んだのだから、気兼ねする必要は無いだろう」


と、酷く掠れた声が俺を椅子へと引き戻した。


仕方ない・・

ちょっとの間だ・・

そうすればこの男の気だって済むだろう。


俺は一つ長く息を吐き出すと、膝の上で拳を握った。
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