愛慾の鎖ーInvisible chainー【気象系BL】
第12章 以毒制毒
落ち着かない気持ちで部屋にいると、程なく盆を手にした和也が部屋に入ってきた。
「おはようございます、坊っちゃま。」
「あっ、おはよう、それよりもさ、鍵どうだった?手に入った?」
挨拶なんかよりも鍵のことが気になってしょうがない。
すると和也は長椅子から腰が浮いてしまったおれを見ると、申し訳なさそうに眉を下げる。
「それが、その‥」
と、更に口籠ってしまい‥
「まさか‥失敗した、とか‥」
無くはない展開に頭が真っ白になり
「いや‥、鍵は手に入ったんですけど‥」
「‥は?じゃあ‥なんでそんな顔するの‥、てっきり上手くいかなかったのかと思って、どうしようかと思ったよ‥」
けれどその後の言葉で気を取り直した‥というより、ほっとして、すとんと椅子に腰を下ろした。
でも彼は浮かない表情のままで、話す言葉に迷っているような雰囲気で‥
「‥どうしたの?なんかあったの‥?」
なかなか話そうとしないのを促すように聞くと、和也は机の上に盆を置いたと同時に
「申し訳ございません!あのっ、鍵を取ろうとして澤さんに見つかってしまって!」
床に膝をつくと崩れるように頭を下げた。
「えっ⁈澤に⁈」
おれは驚きのあまり、つい声が大きくなってしまう。
だって‥さっき澤と顔を合わせた時は、そんな素振りは全く無かった。
寧ろ穏やかというか‥何とも言えない優しげな雰囲気さえ漂っていたように見えたのに。
「それで仕方なく、助けたい人がいるって‥、経緯を話したら鍵をくれたんです」
「澤が‥くれたの‥?」
そんなことしたのが兄さんに知れたら‥
ただじゃ済まない。
全ての怒りの矛先は澤に向いてしまう‥!
「はい、でも俺、受け取ったものの‥澤さんが心配で‥。でも智さんは助けたいしで、どうしたらいいか‥」
ぎゅっと拳を握りしめて俯いて。