愛慾の鎖ーInvisible chainー【気象系BL】
第12章 以毒制毒
「許していただけるのなら‥」
言葉少なに言うと、また身動いで眠りに就こうとする。
「くくっ、やけに素直で気味が悪い。結納の日も近いし‥、お前をいつまでもこの部屋に置いておく訳にもいかない‥。かといって外に出せば平然と他所の男の所に寝返りかねないだろうからな」
雅紀から俺に寝返ったように、別の男の懐に潜り込むくらい造作もないことだろう。
「そんな‥僕はそんなこと‥」
「それか‥いっそのこと男娼として堂々と屋敷の中に置いておくか‥」
俺が飼っていた者が男だと知ったあの男が渋い顔をするのも愉快だ。
それにあの男は男色には興味を示さない。
すると
「え‥、潤、様‥、なんでそんなこと‥急に‥」
明らかに動揺を見せた智は驚いた表情で俺を仰ぎ見る。
「お前にとって悪い話じゃないだろう?雅紀の所でもそうやって飼われてたんなら大差は無い筈だ」
「でもっ、僕はここで静かに潤様の傍にいる方が‥」
声を震わせ、らしくない殊勝な言葉に僅かに苛立ちを感じる。
今更‥飼われてるだけのお前が、我が身の処遇をどうこう言える立場にあるとでも思っているのか‥?
だとしたら甘いな‥
「そんな我が儘‥通用するとでも?お前は所詮、俺の玩具なんだ。それをどうしようと俺の自由だ」
「玩具‥ですか‥」
「そうだ。ああ‥ちょうど明日いい機会がある」
「明日‥‥?」
智は怪訝そうな表情になって、微かに眉を顰めた。
明日‥翔の誕生日を祝う宴がある。
その場に智を連れて行き‥否応無しにあの男に認めさせる。
「なに‥男娼とさえ言わなければいいだけの話だ。お前を明日の祝宴に連れて出るのも一興だな」
言わなくてもあの男は気がつくだろう。
そして来客の手前‥認めざるを得ない。
面白いことに‥なりそうじゃないか。