愛慾の鎖ーInvisible chainー【気象系BL】
第12章 以毒制毒
潤side
腕の中で身動ぐ男‥
挑発的な言葉を吐く訳でもなく、かといって甘えてくる訳でもない。
ただ黙って‥されるがままに抱かれて眠る。
智は感情を失くしたのかと思うほど、すっかり大人しくなってしまった。
「智‥、何かよからぬことを考えてるんじゃないだろうな?」
まだ眠りに就いてないとわかって問うと、俺の腕を枕にしていた彼は黙って首を横に振る。
「大人しくしてないと捨てられるとでも思ったか?」
嫁入りしてくる女がいくら幼いとはいっても、いずれ智の存在に気がつくだろう。
それを恐れているのか‥?
「違い‥ます。潤様はそんなことするお方ではないでしょう?」
「さぁ‥どうだか。俺がそんなに心優しい人間に見えるのか?」
少し意地悪く聞くと、智は一瞬言葉を詰まらせて。
「だって‥こんな僕を傍に置いて下さってる‥」
「それはお前が面白い男だからだ。飽きれば‥それまでってことだ。」
「じゃあ‥潤様が僕に飽きれば‥捨てるってこと‥?」
漸く顔を上げ、熱の余韻が残る目で俺を見つめる。
「捨てられたくないのか‥?」
物言いたげなその目がゆらりと揺れ‥
「ここは温かで‥、僕は潤様を‥愛して、る‥」
智はそう声を震わせると、肩口に顔をうずめた。
「愛‥か、そんなもの本当にあると思ってるのか‥?馬鹿馬鹿しい‥」
俺はそんな形無いものは無いに等しいとさえ思う。
そんなもの‥感じたこともなければ、触れたこともない。
親は子を愛すると言うが、俺は一度たりともそれを感じたことはなかった。
愛を知らない男が愛してると言われても、その本質なんてわかりようがないのは当たり前だ。
俺はお前に愛を寄越せと言った。
そしてお前は快楽を共にすることが愛だと、その身体を開いて‥
「まぁ‥お前の言う愛がどんなものかは知ってるが‥、この先もずっと俺の傍でその愛とやらを貫くつもりか?」