愛慾の鎖ーInvisible chainー【気象系BL】
第1章 愛月撤灯
智side
一度は閉じた筈の釦が外され、開いたシャツの間から差し込まれた汗ばんだ手が、肌の感触を味わうように滑り・・
「あっ・・はぁ・・っ・・・・」
震える指先が、胸の先の小さな果実に触れた瞬間、僕の全身を甘美な刺激が駆け抜けた。
感じたくなんかないのに・・
なのに指で捏ねられ、掌で転がされ・・、その度に僕は喉元を仰け反らせる。
感情とは裏腹の、抗えない身体の恨めしさに、キュッと唇を噛めば、そこに重なる薄い唇。
固く閉じた門を抉じ開け、忍び込んで来る濡れた舌先に、咥内を蹂躙するように犯されれば、僕のちっぽけな自尊心など、微塵の欠片も無く打ち砕かれる。
「ん・・ん・・・・、ふぁっ・・・・」
どちらの物とも区別のつかない、溢れた唾液が顎を伝い、仄かに熱を帯びた胸元を濡らして行くのさえ気にならない程、僕の身体は快感の渦に飲み込まれて行き・・
それはやがて僕の最も穢れた場所に火を付けた。
僕は雅紀さんの手をそっと握ると、火照る顔に笑顔の仮面を貼り付け、
「雅紀さん・・、僕、もう・・・・」
布越しにも分かる程に膨らみ始めた中心へと導いた。
「君は・・、口付けだけでここをこんなにしてしまって・・。本当に悪い子だ」
大きな手が布越しにゆるゆると動き、まるで仔猫でもあやすかのように撫でられると、腹の底からジワジワとせり上がってくる甘い疼きに、僕の身体が打ち震えた。
「ああ・・、言わないでぇ・・っ・・」
堪え切れず零れる声を抑えることなく、僕は雅紀さんの頬を両手で包んでから、まるで幼女にも似た仕草で小首を傾げ、涙を溜めた目で見上げた。
こうされると、貴方が自分を抑えられなくなることを、僕は知っているから・・
「貴方の・・雅紀さんのせいだ・・。雅紀さんが僕をこんなに悪い子にするんだ・・」
そう・・、あの日から・・・・
財産も、住む家も、両親の命さえも奪われ、先のことすら考えられずに、たた死への欲求に支配されていた僕を、貴方が変えたんだ・・
貴方の笑顔が・・
貴方の優しさが・・
貴方の愛が・・
僕に生きる希望を与えたんだ。
あの日・・
春の嵐に舞い散る桜の花弁の下で、貴方に出会ってから僕は・・