愛慾の鎖ーInvisible chainー【気象系BL】
第11章 海誓山盟
翔side
やっと言えた‥
壁に阻まれて言えなかったこと‥
伝えられなかった想い。
そしてようやくわかった‥
智がここに留まっていた理由も‥
壮絶なまでの決意も。
おれは智がそうしたいというなら、仕方がないと思った。
そう思わせてしまうほどの苦しみを受けてきて、おれのことも憎くて殺してしまいたいって思うのなら‥それも償いの一つの方法なのかもしれないって‥思った。
けれど‥智はそんなことできなくて。
意識の遠退いたおれを必死になって呼ぶその目からは、止め処なく涙が流れていた。
「おれのこと好きだ、って‥。もう一度ちゃんと聞かせて?」
全部‥‥受け止めるから‥
そう言って抱きしめた身体からは少しずつ力が抜けていって‥
「好き‥、翔君が好き‥」
あたたかな吐息を洩らすようにこぼれ落ちた言葉は、おれの胸に柔らかくしみ込んでいった。
悲しみも憎しみも洗い流して、残った想いがそれだったのなら‥
「ありがとう‥智‥‥」
その言葉に感謝しかなくて‥
全ての罪が許された訳じゃないけれど、今こうして裸になった感情が愛おしくて堪らなかった。
おれも‥智も‥‥
ただ純粋にお互いを好きなんだって‥
おれたちはただ抱きあって‥ずっと泣いてて‥
でもその涙のあたたかさは、おれたちにしか分からない。
ようやく‥ようやく繋がった想い‥
そっと腕を解くと胸の中に顔をうずめていた智がおれを見上げて
「翔君‥、僕を‥見つけてくれて‥‥ありがとう‥」
そう‥柔らかな微笑みを浮かべる。
それはおれが欲しかった智の微笑み‥
今それが自分の腕の中にあることが、本当に嬉しかった。