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愛慾の鎖ーInvisible chainー【気象系BL】

第11章 海誓山盟



「どう、って‥‥、そんなこと‥」

そう言ったっきり口を噤んでしまった智は、すっと視線を落とした。

悲しそうな含みのある頬は微かに震えて。


「好きでもないのに‥おれに抱かれようとしたの?兄さんに抱かれるみたいに‥」

「違うっ、違うよ‥翔君!」

「でも智はおれのこと好きだって‥一度も言ってくれない。‥‥憎いんじゃない、本当は‥」

「なんで‥そんなこと‥‥きく、の‥?」

智はおれの言葉に悲しみの仮面ですら剥がれ落ちてしまって、表情を失い‥絶句した。


耳が痛くなるような沈黙が薄暗い空間を張りつめたものにして‥


「知ってるんだ‥、智のご両親のこと‥。雅紀さんのところで暮らしていたことも‥聞いた。」

それを真っ黒に塗り潰してしまうかのような苦しい過去を口にする。

すると心からも色を失ったんじゃないかって思うほど微動だにしない智は、息をすることすら忘れているかのようだった。


「憎いよね‥、おれの父様のこと、本当は殺してやりたいくらい憎いよね‥。」


おれは2人にとって一番辛い‥

でも避けては通れない道を選んだ。


知らないふりをすることもできたかもしれない。

好きだといって身体を繋いで‥曖昧にしてしまってもよかったのかもしれない。


でも想いを遂げてしまったら‥


智のいうように後戻りできなくなるようなところまで行き着いてしまったら‥おれは、どんなに憎まれていても智を自分に縛りつけてしまいたくなると思った。


兄さんのように‥

鎖に繋いででも‥人知れないところに閉じ込めてでも、自分の想いで雁字搦めにしてしまいたくなるんじゃないかって‥怖かった。


そんなことはできない‥


泣いている智は見たくないんだ‥

おれが見たいのは幸せそうに微笑んでる智だけ‥

そのためにここから智を連れ出そうって‥

決めたんだ


おれは感情を失くし深い闇が広がった瞳を見つめ

「おれのことも‥憎い‥‥?」

覚悟を決めて‥智の審判を待った。



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