• テキストサイズ

愛慾の鎖ーInvisible chainー【気象系BL】

第11章 海誓山盟



おれは静かになった廊下に出ると、握りしめた鍵を持って兄さんの部屋の木扉の前まで行く。

小さな鍵穴にそれを入れてそっと回すと、かちりと音がした。


やっと‥やっと智に会える‥


その一心でゆっくりと木扉を開けると、暗い部屋の中はしんと静まり返っていて、どうやら智は眠っているようだった。

月明かりを頼りに寝台の傍まで近づくと、穏やかな寝息が聞こえる。

布団の中で丸くなって口元まで隠れていて‥。


なんて安らかな顔をしているんだろう。


感情の全ての色をのせていないその横顔は本当に無垢で美しかった。

いつまでも‥これから先もずっと‥

こんな智の顔を見ていたい‥そう思ってしまうほどで、おれは静かに眠るその人を幸せな気持ちで眺めていた。


すると小さく吐息を洩らした智が寝返りをうち、微かに目蓋を開けて‥

「しょぉくん‥?」

と、まるで夢の続きでも見ているかのような柔らかな声でおれを呼ぶ。

「‥智、会いにきたよ‥」

おれは夢現の中にいる智を驚かせないように小さな声でその名前を呼び、透き通るように白い頬に手を伸ばした。

「嬉しい‥嬉しいよ‥‥。翔くんに会いたかったんだ‥」

って柔らかく微笑んだ智は、すうっと目蓋を落とす。


きっと夢を‥見ているんだ‥

現実に会うことなんて叶わないって分かってるから、本当におれがいるんだって思ってないんだ‥。


また眠りの中に落ちていった智が口にした言葉は、偽りのない気持ちなんだと信じたかった。


「智‥、起きて‥おれだよ、翔だよ‥」

おれはもう一度、智の言葉が聞きたくて、微笑みを残した頬を撫でながら耳元でそう囁いた。

「‥ん‥っ‥‥」

「‥起きて‥智‥、おれ、本物だから‥」

そっと話しかけながら、なかなか眠りから覚めない智の髪に小さく口づけた。

/ 534ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp