愛慾の鎖ーInvisible chainー【気象系BL】
第3章 兎死狗烹
和也side
あの人・・智さんと俺とは、共に幼少期を過ごした幼馴染だ。
尤も、片や公爵の子息・・俺は、と言うと公爵家に仕える使用人の息子。
俺達の間には、天と地ほどの身分の差があった。
でもそんなことをおくびにも出さず、智さんは俺を一人の“友人”として扱ってくれた。
それがとても嬉しくもあり、共に過ごす時間の楽しさに、幸せさえ感じていた。
そう、あんな事が起こるまでは・・・・
あの事件が智さんを深い闇の底へと陥れたんだ・・
そう・・あの日から智さんは変わった。
あの日から・・智さんはそれまで真っ白だった翼を、少しずつ闇の色に変えて行った。
あんなに美しかった真っ白な翼を・・・・
俺はそんな姿を見ていたくなくて、何度も目を逸らそうとした。
でも出来なかった・・
あの人を・・智さんを一人にする事なんて、俺には出来なかった。
俺は誓った。
この先、何が起ころうと、命懸けであの人を護ろうと・・
あの日・・、最後に見せた天使の涙に・・
誓ったんだ・・。
俺は智さんの目論見通り、松本家に使用人として潜り込んだ。
その方が智さんにとっても、そして俺にとっても都合がいいと考えたからだ。
それに何より、智さんには支えが必要だと感じたから・・
松本家で執り行われる晩餐会に、あの人が・・相葉雅紀が情人を伴ってやって来ると耳にしたのは、晩餐会の前日の夜だった。
あの人が、まさか智さんを・・?
考えられない。
あれ程までに大切に、誰にも触れさせないように、籠の中に閉じ込めていたのに、何故急に・・?
いや、もしかしたら智さんの方から、こうなることを仕向けていたのだとしたら?
だとしたらあの人・・相葉雅紀はとんでもない過ちを犯すことになるのでは?
尤も、智さんはそれを望んでいるのだろうけど・・
相葉雅紀は所詮、松本に辿り着くための足がかりでしかないのだから・・
可哀想な人・・