愛慾の鎖ーInvisible chainー【気象系BL】
第11章 海誓山盟
翔side
いくら想いをぶつけても壁の向こうから微かに聞こえてくるのは『ごめん』っていう言葉ばかりで‥
謝らなきゃいけないのはおれだっていうのに、それっきりいくら壁を叩いても智が返事をくれることはなかった。
どうして伝わらないんだろう‥
手をとって‥抱きしめて、気持ちの伝わらないもどかしさをどうにかしたい。
なんで智がおれに謝るのか‥理由が知りたい。
だって智は悪いことなんて何もしてない。
悪いのは‥智から何もかも奪ったのは、おれの家族なんだもの。
なのに智がおれに謝るなんて‥‥。
何か‥まだおれの知らない何かがあるの‥?
君がおれに謝る理由が‥あるの?
いくら考えても、どう思いを巡らせても思い当たることが見当たらない。
やっぱりちゃんと話さなきゃ‥
こんな分厚い壁に阻まれたままじゃ、肝心なことが何もわからないまま‥。
「好きだから‥智の笑顔がもう一度見たいって思うから‥、おれ、諦めないよ。ちゃんと会えたら‥君の気持ちも聞かせて?受け止めるから‥智のこと、全部受け止めたいって思ってるから‥」
物言わぬ壁に想いだけを伝えて‥その傍を離れた。
それからというもの‥いくら壁を叩いても智は返事を返してくれることはなくて。
夜になれば‥それまでと変わらず、兄さんの手で快楽の高みへと昇りつめる切なげな声だけが洩れ聞こえてきた。
後日遅れて届いた雅紀さんからの手紙には、次の休日の前の日に兄さんを酒席に誘うつもりだと書いてあった。
そして‥それまではくれぐれも無茶なことはしないようにって。
あと4日‥‥
おれはその日が来るのを、ただひたすら‥待った。
こんなにも時間(とき)が過ぎるのが遅いと思ったことは無いくらい‥長い時間に感じる4日間だった。