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愛慾の鎖ーInvisible chainー【気象系BL】

第11章 海誓山盟


昼休みになり、雅紀さんが丁度仕事に区切りを付けた所で、俺達は馬車に乗り込んだ。


漸く二人きりになれる‥


自然と胸は弾むけど、それをぐっと堪え、坊ちゃんの手紙の内容に触れた。

「俺、どうして差し上げたらいいのか‥」

坊ちゃんの気持ちは痛い程分かる。

自分を抑えられないくらい、智さんのことがすきだってことも‥

でも事を急いては全てが台無しになってしまう。

俺は一体どうしたらいいのか‥


「そうだね‥、翔君の気持ちを思うと、一度智とゆっくり合わせて上げたいとも思うが‥。そうなると、和也に危険な橋を渡らせることにも成りかねないからね‥。それが心配なんだよ、私は‥」

雅紀さんの腕が俺の肩を抱き寄せ、額に頬が触れる。

「雅紀さん‥」


今までだって散々危険な橋を渡って来たんだから今度だって大丈夫‥そう思いたいけど、今は以前とは違う。

俺にも心から大切に思える人が出来て、その人を悲しませたくない、って思うと自然と足が竦む。

「和也、一つ確認なんだが、鍵を持っているのは、その部屋の主である松本と、澤だけだと言ったね?」

「‥はい。他には‥旦那様も恐らくお持ちではないかと‥」

俺の言葉に耳を傾けながら、雅紀さんが顎に手をやり、低く唸る。

「澤を味方に付けることは出来ないだろうか?」

「澤さんを‥ですか?」

とんでもない提案に、俺は目を丸くして雅紀さんを見上げた。

「そうだ。澤を味方に付けてしましまえば、何の苦労もなく翔君は智に会うことが出来るんではないだろうか?」

それはそうだけど、でもあの澤さんを相手にそう簡単に事が運ぶだろうか‥

いや、無理だ。

仮に出来たとしても、今度は澤さんを危険にさらすことになる。

そんなのは絶対駄目だ。

それに澤さんは、あの男に常に服従の姿勢を崩さない。

もし澤さんが裏切ったら‥

その時は俺は勿論のこと、智だってそれなり罰を受けるに決まってる。


そしたらまた坊ちゃんは苦しむことになる。

それだけは何が何でも阻止しないと‥
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