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愛慾の鎖ーInvisible chainー【気象系BL】

第11章 海誓山盟


和也side


坊ちゃんの焦る気持ちは分からなくもないけど、その焦りが裏目に出やしないかと不安が募る。

でも一度言い出したら多分引くことはないだろうから、ここは俺が冷静にならないと‥

俺まで勇み足を踏んでしまっては、折角の計画も台無しになってしまう。

俺は雅紀さんの屋敷までの道程、何度も自分に言い聞かせた。



ても、屋敷に着くなり、俺は見事な門前払いを食らってしまった。

雅紀さんはもう仕事に出た後で、屋敷にはすっかり顔馴染みになってしまった使用人の茂さんと、そしてあの面差しが雅紀さんと良く似た奥様しかいなくて‥


なんてこった‥
一足遅かったか‥


追いかけてでも‥、なんて言われてしまったら仕方がない。

考えあぐねた俺は、雅紀さんのお母さんに雅紀さんの行き先を尋ねることにした。

すると幸運なことに、雅紀さんのお母さんが丁度お出かけになる所で、俺は無理は承知で馬車に便乗させて貰えるよう頼み込んだ。

「すいません、ご無理を言ってしまって‥。でもどうしても早急にお伝えしたいことがあって‥」

俺は坊ちゃんから預かった風呂敷包みを胸に抱き締め、繰り返し頭を下げた。

「和也‥とか言ったわね?遠慮しなくても良いわ。ささ、お乗りなさいな」

有難いことに、雅紀さんのお母さんは俺が馬車に同乗することを許可してくれた。


良かった、これで坊ちゃんに叱られなくて済む。


安堵したのも束の間、今度は自分の大胆さに呆れてしまう。


いくら坊ちゃんの頼みとは言え、雅紀さんのお母さんの馬車に同乗させて貰うなんて‥

使用人の分際で失礼な奴だと思われていないだろうか‥


気まずさを抱えたまま、隣に座る品の良い着物を着込んだ雅紀さんのお母さんを横目でちらりと見た。

目鼻立ちは勿論のことだけど、横顔が雅紀さんにとても良く似ている。

「そんなに見つめられては、穴が空いてしまいそうね?」

俺の視線に気付いたのか、雅紀さんのお母さんが口元を手で覆ってくすくすと肩を揺らした。

「あ、あ、あのっ‥、これはとんだ失礼を‥」

俺は咄嗟に頭を下げると、熱くなった顔を両手で覆った。
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