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愛慾の鎖ーInvisible chainー【気象系BL】

第11章 海誓山盟


翔side


おれはどうしても智の気持ちが知りたかった。

想いは伝えたけれど、智がおれのことをどう思っているか‥兄さんの元から逃げたいと思っているのかって確かめたかった。


時間が無い‥

そのことがおれの気持ちを焦らせてるんだってこともわかってる。

おぞましいとさえ思う2人から智を守らなきゃって気負い過ぎてるのもわかってるんだ。

でも既に走り出した自分の気持ちを止めることなんてできなくなっていた。



おれはその想いを便箋に認めると、明日の朝一番に頼みの綱である雅紀さんに届けるよう和也に託した。


もしかしたら雅紀さんは駄目だって怒るかもしれない。

無茶をするなって‥和也を危ない目に遭わせるなって言うかもしれない。

だけど智の気持ちが分からないまま過ごすのは、もう耐えられなかった。



冴え冴えと肌を刺すような冷たい夜の空気が熱く滾る感情と入り混じり、感じたことの無い高揚感を生み出す。

一向に温度の下がらない持て余すほどの感情の昂ぶりに眠気なんて襲ってくるはずもなく、寝台から降りて窓から薄い月明かりが照らす庭に目をやる。


想像もつかないほどの財力で成された豪奢な屋敷や広大な庭。

何一つ不自由の無い生活。


全てを引き換えにしてでも智を守ってあげたいと思えるのか‥。

たった数回しか言葉を交わしてない人の為に、それを捨てる覚悟があるのか。

兄さんや父様を怒らせるっていうのは、そういうことなんだ。


智に会ってその気持ちを聞いて‥

助けて欲しいんだって言われたら‥おれは迷わずその手を取るつもりでいた。

だっておれの父様は智から全てを奪ったんだもの。

兄さんは今も智から自由を奪って‥

それを償えと言われたら‥どんなことをしてでも償うつもりでいた。


不思議だよね‥。

初めて会ったあの日に見た君の涙の意味もわからずに、泣いているからってキャンディを口に入れてあげたり‥

鎖に繋がれて可哀想だからって、震える肩を抱いたりして。

同情から始まったおれの気持ちは、こんなところにたどりついてしまった。


智‥君はどうなんだろう‥

ちゃんとおれに教えて‥?


おれはそれがどんな気持ちでも、偽りのないものならちゃんと受け止めるから。


その覚悟はできてるから。



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