愛慾の鎖ーInvisible chainー【気象系BL】
第11章 海誓山盟
和也side
潤坊ちゃんと翔坊ちゃんが揃って旦那様の書斎に入って行った。
いつもなら潤坊ちゃん一人なのに、翔坊ちゃんまで‥
ただ事じゃない‥
まさか智さんのことが旦那様に知れてしまったとか‥?
もしそうだとしたら‥大変だ。
そう思った俺は、話が終わった頃を見計らって翔坊ちゃんの部屋を訪ねることにした。
とは言っても、いくら世話係だとしても、理由もなくそう足繫く坊ちゃんの部屋に出入りしていては変に思われる。
逸る気持ちを押さえ、お茶と簡単な夜食の支度をして、それを手に坊ちゃんの部屋の扉を叩いた。
でも‥
二度三度と叩いてみるけれど、扉の向こうからは何の応答もなく‥
おかしいなあ‥、この時間だからてっきりお部屋でお勉強でもなさってると思ったんだけど‥
首を傾げた、丁度その時だった。
「あぁんっ‥、いいっ、じゅ‥さまぁっ」
甲高い声が、隣り合う潤坊ちゃんの部屋から聞こえて‥
今の声って‥、智‥さん‥?
俺は応答を待たずに坊ちゃんの部屋の扉を勢い良く開けた。
「坊ちゃん、今の声っ‥!」
えっ・・・・?
いる、と思っていた場所に坊ちゃんの姿が見当たらなくて、俺は部屋の中をぐるりと見回した。
そして寝台に頭だけを突っ込む坊ちゃんを見つけると、手にしていた盆を机の上に置き、震える背中をそっと摩った。
「坊ちゃんにも聞こえたんですね‥」
廊下にいても聞こえたんだ、たった一枚の壁で隔てられたこの部屋にも当然‥
坊ちゃんは一体どんな気持ちであの声を聞いたのか‥
それも一度や二度じゃない筈。
これまでだって何度も‥
それを思っただけで胸が締め付けられそうになる。
俺は坊ちゃんの背中の震えが止まるまで、ずっと黙って背中を摩り続けた。
それしか俺には出来ないから‥