愛慾の鎖ーInvisible chainー【気象系BL】
第11章 海誓山盟
部屋を出ると呆気にとられていた翔がまじまじと俺の顔を見て
「いいの‥?会ったことも無い人なんでしょ?」
子供じみた純粋な思いを口にする。
「当たり前のことだ。婚姻は家同士でするものだ。そこに情など必要無いからな。」
特に長子である俺には、それが至上命題となっているのは至極当然だ。
すると翔は悲しそうな目をして
「そんな‥、相手のお嬢さんもそれでいいの?俺より年下だって言ってたよ‥」
世間を知らなすぎるのか‥夢想家なのか、決まった話に異論を唱えようとする。
「馬鹿馬鹿しい‥。可哀想だと思うならお前が話し相手をしてやるといいさ。」
「‥兄さん‥‥」
その悲しみから非難めいた色に変わっていく瞳から目を背けると、その場に立ち尽くしている弟を置いて部屋へと戻った。
「おかえりなさいませ。お父様の話はもう済んだんですか‥?」
具合の良くなった智は、澤が見繕ってきた着物を着せられて長椅子にぼんやりと座っていた。
「ああ、大した話じゃなかったからな。どうやら俺は子供同然の娘を嫁取りすることになるらしい。」
隠すような事でも無い話をしながら長椅子にどさりと身体を投げ出すと
「嫁取り‥、僕がいるのに?潤様は‥僕をどうなさるおつもりですか?」
智はすっと懐に入り込むと肩に頭を預ける。
「くくっ、残念だろうが、お前を手放すつもりはない。こんなに淫乱な身体に慣れた俺には女は要らない。小娘には飴玉でも咥えさせておけばいいさ。俺のものを咥えるのはお前だけで充分だからな。」
俺は大人しくしている智の顎を取ると、薄く開いた唇を舌先で舐め‥
「それにその強情な唇も淫慾にまみれている時だけは素直だからな。」
「潤、さま‥」
皮肉めいた言葉に目を逸らそうとした顔を上に向けると、有無を言わさずその咥内を蹂躙する。
そうだ‥それでいい。
お前は慾に跪いて‥俺に満たされて快楽に喘ぐことがお似合いなんだ。
ゆっくりとそれを教えてやろう‥。
お前から全てを奪い取るまではな。