愛慾の鎖ーInvisible chainー【気象系BL】
第11章 海誓山盟
それを見た兄さんは小さく溜め息を吐くと
「それが翔の可愛いところでもあるが、そんなことではいつまでも経っても父上の言いなりのままだし、欲しいものを手に入れることなんてできないぞ。」
ってはっきりとそう言い切った。
恐らく他意はなく、年長の兄としてしっかりしろって言いたかったんだろうけど、今のおれはそれを素直に聞けなくて‥。
どんなことにも動じなくて強い兄さんは、その力で智の自由を奪って、あんな酷いことをしてるんだ。
そう思ったら‥
「おれ、こんなだけど‥兄さんみたいに強くなれないけど、おれはそんな自分が嫌いじゃないんだ。焦らずにいくよ。」
おれにしては珍しく自分の思ってることを口に出していた。
このままじゃ駄目だっていうのはわかってる。
だけど兄さんが智にしているようなことはしたくない。
すると
「そうか‥お前も成長したんだな。‥仕方ないか。」
すっと目を伏せてそれだけ言うと、階段を降りていってしまった。
どうしたんだろう‥
らしくない態度に引っかかりを感じたけれど、父様に呼ばれていることを思い出して慌ててその後を追った。
書斎の前で追いついたおれをちらりと見た兄さんは分厚い木扉を叩いて、中からの返事が聞こえるとゆっくりとそれを押し開ける。
部屋の真ん中にある長椅子で寛いでいた父様は、おれたちを向かいに座らせると
「正月早々だが潤には祝言を挙げてもらうことにした。」
まるで安価な物を買うような口ぶりでそう告げた。
すると兄さんまでもが
「それはまた‥、やけに急な話ではないですか。」
驚く俺を尻目に含み笑いをし、ことも無げに返事を返す。
「散々自由にしてきただろう。そろそろ年貢を納めてもらおうじゃないか。」
「自由‥、確かにこの歳になって嫁の一人もいなければ、格好がつきませんしね。」
何‥これ‥‥
祝言を挙げるって‥お嫁さんをもらうってことでしょ‥?
そんなに世間話をするみたいに軽々しくしていい話なの?
おれは呆気にとられて2人のやり取りを聞いていた。