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愛慾の鎖ーInvisible chainー【気象系BL】

第11章 海誓山盟


翔side


あれから智がどうなったかも分からないまま年が明け、年始の挨拶に来る親類や父様の知人やなんかで屋敷の中は賑やかしくなっていた。

跡継ぎである兄さんは勿論のこと、おれもそれに同席させられるもんだから、智の様子を知ろうにも壁を叩くことさえままならなかった。



澤の様子を注意深く見ている和也の話だと、どうやら熱は下がっているらしく、食事の膳を運んでいる姿も見かけたらしいから一先ず安心はしていた。


兎に角、屋敷への人の出入りが落ち着かないことには、どうにも身動きが取れなくて‥。

和也もおれも焦れるような思いでいた。



そうして数日が過ぎ来客も疎らになった頃、おれと兄さんは滅多に入ることの無い父様の書斎に呼ばれた。


二人揃って呼ばれるなんて何事だろう‥。

おれの進学は決まっているし‥母様の病状もよくはないものの、変わりなさそうだし。


わざわざ書斎に呼ばれる心当たりの見つからないおれが、そわそわと落ち着かないでいると

「翔は父上に叱られるような、何か悪いことをした訳じゃないだろう?そうでなければ堂々としていればいいんだ。」

先に階段を下りる兄さんが声に揶揄いを含ませる。

「そうじゃないけど‥改まって呼ばれると、少し怖いんだ‥。」

いつも怖い顔をして、ろくすっぽ話掛けてもくれないような父様がって思うだけで、心臓がどたばたと騒ぎだす。


それに智の双親を手にかけたのが本当に父様だったらって思うと、目を合わせられるかどうかも分からないくらい挙動不審になりそうなのが怖かった。


「相変わらず臆病なんだな。いつまでも俺が盾になれる訳じゃない。そろそろ父上の苦言ぐらい躱せるようになってもいいんじゃないか?」

途中で立ち止まって振り返る兄さんを見下ろす格好になったおれは、昔から知ってる優しさで話す兄弟に何と言葉を返せばいいのか一瞬迷ってしまう。

いつも父様の高圧的な態度の前では、借りてきた猫のようになるしかなくて‥

「おれは兄さんみたいにはなれないよ。」

気弱な言葉と共に視線を落とすしかなかった。



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