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愛慾の鎖ーInvisible chainー【気象系BL】

第10章 智勇兼備


翔side


無理はするなという雅紀さんの言葉は尤もだってわかってる。

だけど、迅る気持ちがどうしても抑えられない。


「雅紀さん、何とか智をもっと早くに連れ出す方法は無いでしょうか‥?おれの誕生日まではまだひと月近くあるんです。それまであの人を兄さんの部屋に置いとくなんてしたくない。」

おれと和也が危ない目に遭わないように案じてくれている瞳に逆らうように身を乗り出す。

恋人である雅紀さんにその身を大切にされてる和也は、食い下がる俺と年長の彼を見比べて不安げな表情を浮かべていて。


「それなんだがね‥。私も考えていない訳ではないのだが、これから年明けしばらくはお互い家人が在宅している時間が長いだろうし、下手に動くのは危険が多すぎると思うんだよ。」

和也の片手を取ったままの雅紀さんは、おれに向き直って諌めるように話す。


確かに‥兄さんも父様も来客があるから、ほとんどの時間はうちにいる。

「それはそうだけど‥その隙を狙うことはできませんか?」

来客をもてなしている隙に智を‥


「いや、翔君‥それは無理だ。例え智を部屋から連れ出すことができたとして、その後どうするつもりなんだ?」

「取り敢えずおれの部屋に‥」

「だめだ。そんなところではすぐに見つかってしまうだろう?そうなったら‥君も智もただじゃ済まなくなる。連れ戻された智はどうなる‥?更に酷い仕打ちを受けるかもしれないんだよ。」

無鉄砲なことを口走るおれを冷静に、そして厳しい声で現実的に話す雅紀さんの目にも悔しさが滲み出ていた。


「それは‥そんなことになったら、おれ‥」

「だから慎重にならざる得ない。君も辛いだろうが、智はもっと辛い筈なのだ。どうか落ち着いてくれないか。」

目先のことに捉われて先走ってしまうことの危うさを、懸命に伝えようとしてくれてるのに‥

「でもっ‥何もしてやれないのが悔しくて、歯痒くて‥」

おれはぐっと握った拳を腿に打ち付ける。

そんなおれを見た和也までもが

「坊ちゃん‥。お気持ちは分かりますが、これからしばらくは使用人たちも屋敷の中を忙しく歩き回ってますし‥智さんを屋敷から連れて出るのは難しいと思うんです。」

雅紀さんと同じようなことを繰り返すばかりだった。




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