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愛慾の鎖ーInvisible chainー【気象系BL】

第10章 智勇兼備


翔side


智がどうやら病に伏しているようだと聞いたおれは居ても立ってもいられない気持ちになったけれど、自分の力ではどうしようもなくて‥。

少しぐらい無理をしてでも、誕生日の祝宴まで待たずに智を連れ出せないかと思い始めていた。


でもそれだっておれ一人の力じゃどうすることもできない。

とりあえず雅紀さんに相談したい‥その一心で和也を遣いに出した。


年の瀬も迫るこの時期に会ってもらえるかどうかは分からなかったけど、何もせずにただ壁を見つめることしかできないのが腹立たしかった。



じきに戻ってきた和也は雅紀さんには会えなかったけど、おれの認(したた)めた封書を預けてくることはできたと、少し残念そうな表情(かお)をしていて‥

「きっと今日明日にでも雅紀さんから遣いが来るはずだから、和也もいつでも出られるようにしておいてね。和也がさ‥いてくれないと‥おれじゃ何の役にも立たないから。」

長椅子の傍で膝を折っている彼の手を取り、頼りにしてるんだって握りしめた。

「わかりました。みんな思いは同じですから‥頑張りましょう。それよりも智さんの具合の方が気になります‥。何とかまた鍵を持ち出せたらいいんですけど‥澤さん、ずっとあれを持ってるみたいで機会がなくて。」

おれの思いを汲み取るように頷いてくれた和也は、どうにか智の様子を知ることができないかと頭を悩ませてくれるんだけど、こればかりはどうしようもないらしい。

「大事なものだからね‥仕方がないよ。それに智の具合も、そんなに重症なら医者を呼ぶくらいのことはする筈だし‥。」

兄さんにもそれくらいの良心はあるはず。

だっておれにはとても優しい兄さんなんだから。


「‥ですよね‥‥」

それっきり八方塞がりになってしまったおれたちは、雅紀さんからの返事を待つことにした。



夜になって雅紀さんからの遣いが手紙を持ってきてくれて、明日の夕方遅くになら話しができそうだから訪ねて欲しいと書いてあった。


雅紀さんなら‥きっと知恵を貸してくれる。

おれはそれに望みを託した。


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