• テキストサイズ

愛慾の鎖ーInvisible chainー【気象系BL】

第10章 智勇兼備


翔side


学校が休暇に入ってるおれは別として、大晦日も近いせいか父様や兄さんは朝のうちに屋敷を出て行ってしまった。

和也も大掃除を手伝うように言われてるらしく、朝に一度顔を見たっきり‥。

多分屋敷の中で一番することの無いおれは、壁の向こうにいる智のことが気になって外出する気にもなれなかった。


夕べは兄さんが帰ってきた後も殆ど物音がしなかったし、智が抱かれてる様子も無さそうだったから、少しは安心して眠ることができた。

正直‥夜が一番気が気じゃ無くて‥

襦袢を着せられてるってだけでも、智は抱かれるための存在だって言われてるようなもので見ていて辛かったのに、白い肌につけられた無数の生々しい痕が余計に哀しかった。


智‥今、何してるのかな‥


兄さんも留守だし、部屋にいるのは智一人の筈。

おれは漆喰の壁の前に立つと控えめにそこを叩いてみる。

いつもなら暫くすると返事があるのに、今日はしんと静まり返ってて物音すら聞こえてこない。


眠ってるのかな‥?


いくらゆっくりできるっていっても朝食の時間はとうに過ぎてるから、それも考えにくくて。

でも何度叩いてみても智からの返事がない。


昨日、いきなり好きだなんて言った挙げ句に口づけなんてしたもんだから、もしかして嫌われてしまった‥?

おれとは関わりたくなくなってしまったんだろうか‥。


「智、ね‥智、聞こえてる?お願いだから返事ちょうだい?」

それでも諦めきれないおれが壁を叩いていると‥

ちりん‥ちりん‥と鳴るはずのない呼び鈴の音が聞こえてきた。


え‥⁈

何で兄さんの部屋から呼び鈴の音が‥⁈


屋敷の人間には秘密にされてる筈の智が呼び鈴を鳴らしていいはずがない。

今までそんなことは一度もなかった筈。

なのに何度も鳴るそれは異様で‥。


‥何かあった‥‥?

智の身に何か‥危険なことでもあったの⁈


慌てたおれは壁から離れて部屋の木扉を開けようとすると、廊下をパタパタと走る足音が聞こえくる。


誰⁈‥‥もし、使用人に見つかったら大変なことになるんじゃ‥


心配になって木扉に耳を当てて様子を窺っていると、どうやら足音は澤のものだったらしく、鍵を開けて中に入っていったようだった。
/ 534ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp