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愛慾の鎖ーInvisible chainー【気象系BL】

第10章 智勇兼備



幼い頃の智の姿を思い出したのか、それとはかけ離れてしまった現在(いま)を悔いるように俯いていた和也だったけど、きゅっと唇を結んで顔を上げ

「でも、坊ちゃんがそう言ってくださるなら、智さんを助け出せそうな気がするんです。あの部屋からも‥真っ暗な闇の中からも‥。」

自分に言い聞かせるように‥おれを勇気づけるようにそう言った。


真っ暗な闇‥


「本当に‥本当にそう思う‥?」

ずっと智を見てきた和也の知ってる真っ暗な闇って‥

きっとそれは安穏と生きてきたおれなんかには想像もつかないような闇‥

その深さを思うと胸が苦しくなる。


なんの苦労も知らないおれなんかが、智を救い出すことができるんだろうか?


その苦悩に俯いてしまいそうになったおれに

「ええ、坊ちゃんとなら‥雅紀さんとなら、できそうな気がするんです。」

和也は希望を見るような声で言うと、きつく結んでいた唇に少しだけ笑みを浮かべる。


おれと和也と雅紀さん‥

皆んなにとって大切な人‥智‥

誰もが智の幸せを望んでる。


「ありがとう‥和也。おれ、天使みたいだっていう智の笑顔が見たい。」


どんな笑顔なんだろう‥

花のように溢れるような笑顔‥

キャンディの甘さに綻んだ表情(かお)‥

他にももっと、もっとおれの知らない笑顔があるんだ。


だから‥

「智を‥絶対にあの部屋から連れ出さなくちゃ‥」

そして必ず天使みたいだっていう笑顔をもう一度取り戻して‥


そうしたら‥おれにも見せてくれるかな‥?


君の笑顔を‥








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