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愛慾の鎖ーInvisible chainー【気象系BL】

第10章 智勇兼備


「鍵がね、開いていたんだ‥」

お茶を飲み干し、漸く落ち着きを取り戻したのか、坊ちゃんがぽつりと言った。

「鍵、というのは‥、まさか潤坊ちゃんのお部屋の‥?」

声を上げた俺に、坊ちゃんが”しっ”とばかりに口に指をあて、目線を周りに巡らせた。

「声が大きいよ‥」

「すいません、つい‥。で、智さんは‥」

咄嗟に声を潜めた。

「きっと兄さんにひどい目に合わされたんだと思う‥、ずっと泣き声が聞こえてたから‥」

坊ちゃんは一瞬唇をぶるりと震わせると、強く握った拳を膝に叩き付けた。

「こんなに近くにいるのに‥、傷ついた智の姿を目の前にして何も出来ないなんて‥。悔しくて堪らないよ‥」

「坊ちゃん‥」


坊ちゃんだけじゃない‥
俺だって同じだ。

智さんを守ると約束したのに、結局その約束さえ果たせずにいるんだから‥


不甲斐なさが胸に込み上げる。

「ねぇ、どうしたらいいの?このままでは智がっ‥そんなの耐えられないよ‥」

俺だって智さんがこれ以上慰み物にされるのは耐えられない。

でもどうしたら‥


「話、出来ないだろうか‥」

「智さんと‥ですか?」

「うん。智に、俺がついてる、ってことをちゃんと伝えたいんだ。それから‥俺の気持ちも‥」


そこまで智さんのことを‥?

ならば俺も‥


「分かりました。何とかして鍵を手に入れましょう」

「出来るの?」

「はい、俺に任せて下さい」


自信なんてないし、本当は怖くて堪らないよ

でも鍵を手に入れることが出来るのは、俺しかいないんだ。

俺がなんとかしなきゃ‥


「分かった。でも危険な真似だけはしないでよ?もし和也に怪我でもさせたら、おれが雅紀さんに𠮟られてしまうから」

「そ、そんなことは‥」

雅紀さんの名前を出された途端、顔が火を噴いたように熱くなる。

俺は両手で顔を覆うと、坊ちゃんに向かって背中を向けた。
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