愛慾の鎖ーInvisible chainー【気象系BL】
第10章 智勇兼備
潤side
嬲られ情けを乞うような目に苛立ちは増す一方だった。
俺の横暴な振る舞いに怯え涙を溢れさせた瞳が、一瞬翔のそれと重なる。
淫欲で弄び服従させたつもりでも、魂胆を隠し思い通りにならないこの男と、天真爛漫に笑いながら俺の元を離れていこうとする弟‥。
可愛げの無い‥
無理矢理捩じ込んだ指先で柔らかな内壁を掻き乱されて、それに誘われるように開いた唇から洩れた吐息には、苦しさの中にも慾の色を含んでいた。
「くくく、口程にもない‥。だからお前は淫売だと言うんだ。どうだ、ここに欲しいか?」
許さない‥お前も‥
苦しげに眉根を寄せ、痛みに混じる快感を逃そうとする唇に、男の味を覚えた滾りを深く挿し込んだ。
「んんっ‥っ、んーっ‥」
「馬鹿な男だ‥素直にしてさえいれば苦しまずに済むものを。懐かない‥従わない者は鞭打ってでも大人しくさせたい性質(たち)でな。‥恨むなら自分の淫乱な身体と強情な性質(たち)を恨め‥。」
手の自由を奪われ、髪を掴まれた智に逃げ場などあろうはずもなく、涙を流しながら喉奥を突かれていて‥
淫欲を誘えば、その時だけは従順な振りをしていたくせに、酒杯を拒み手を振り払った挙げ句に爪を立てたこの男‥どうしてくれようか。
のみ込めない唾液がたらたらと口元から流れ、快楽とは程遠い表情(かお)に苛立ちが募る。
「お前は所詮、俺の玩具に過ぎない‥。俺の慾を満たして、憂さを晴らす道具だ。」
俺の言葉に目を見開き、首を振ろうとした智の口を解放してやると
「‥助けて、許して‥」
小刻みに震える唇から、浅い息と共に懇願が洩れた。
息も絶え絶えな小さな顎を取ると、
「助けてだと?自分から俺のところに来たんだろう‥。雅紀を捨てて俺を飼い主に選んだ。可愛げの無いのは弟だけで充分だ。」
冷たい言葉でその息の根を止めてしまいたかった。
恐怖に怯える智の顔と、雅紀に可愛がってもらったんだと笑顔で話した翔の顔が重なる。
「そんなっ‥僕はっ‥‥っ、」
大きく瞳を揺らした智がつまらない反抗をしかけた頬を、苛立ちに任せて打つと、指を抜いたそこに唾液で濡れた茎を押し当てて‥
「残念だったな‥‥」
憐れみの言葉と共に、哀れな身体を一気に突き挿した。