愛慾の鎖ーInvisible chainー【気象系BL】
第10章 智勇兼備
「あっ…、ご、ごめんなさ‥」
空を切った指先は、潤の頬を赤く染めていて‥
滲んだ血を拭おうと、襦袢の袂を頬に当てた。
「お前と言う奴は、一度ならず二度もこの俺に手を上げるとは‥」
潤が右手を振り上げる。
ぶたれる‥!
そう思うが早いか、僕の身体は弾き飛ばされ、じりじりとした痛みに、目の前で無数の星が散った。
「後生です‥お許しを‥」
熱く火照りと痛みを訴える頬を手で押さえ、床に尻を着けたままで寝台へとにじる。
それは、それまでに感じたことのない恐怖だった。
殺される‥
僕はその場からなんとか逃れようと、床を這った。
でも‥
「俺は礼はしっかりと返す質でな‥」
唇の端だけを上げ不気味に笑った潤が僕の行く手を阻み、長く伸びた前髪を鷲掴みにされると、引き摺られるようにして寝台の上へと放り出された。
「いや‥、やめて‥」
軽く結わえただけの腰紐が引き抜かれ、僕の両手が一纏めに括られた。
そして紐の端を寝台の柱に括り付け、僕をそこから逃げ出せないよう拘束した。
「やだ‥やめてっ‥」
だらしなく合わせた襦袢の裾が捲られ、何も覆う物のない下半身が外気に晒される。
「やめて‥とは‥、ふっ‥笑わせるな。男に尻を振るしか能のない淫乱が!」
両足が開かれ、膝が胸に着くまで身体を折り曲げられると、晒された蕾に潤の指が突き立てられた。
「い‥いた‥ぃっ‥、抜い‥て‥」
懇願する僕をよそに、乾いた蕾に突き立てられた指は奥深くまで埋められ、中を掻き回すように動かされた。
「いやぁっ‥、 やめてぇ‥」
この壁の向こうに、翔君がいるのに‥
翔君に軽蔑されたくない‥
泣き叫びたくなるのを、奥歯をきつく噛んで堪えた。
それでも敏感な部分を刺激されれば、抗えない程の疼きが身体の奥深くから湧き上がってくる。
「くくく、口程にもない‥。だからお前は淫売だと言うんだ。どうだ、ここに欲しいか?」
下衣の前を開き、滾った茎が僕の口元に寄せられた。