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愛慾の鎖ーInvisible chainー【気象系BL】

第9章 愛及屋烏


雅紀side


寝台の上で羽織を肩に掛けて、幾分申し訳なさそうに食事を口に入れられていた和也が、何かを話しかけたかと思ったら、ふわっと頬を染めて‥

どうしたのだろうかと顔を覗き込むと耳まで赤くし、今宵も睦みあうのかと聞かれて、どう応えてやればいいものかと頭を悩ませてしまった。


私の一存で和也を預かり、情交の果てに足腰が立たなくなるまでにしてしまったのでは、翔君の面目が保てないだろう。


まだ年若い和也が初めて得た歓びの余韻の中にいたいのだということは、分かりはしたものの、

「これ以上君の身体に負担をかけたくはないし、何より、私が君を手放せなくなってしまう。そうしたら智はどうなる?君達の助けを待っている智は‥」

疲れを残した小さな身体を、そっと包んだ。

「そう、ですね‥智さんを助けなきゃ‥。おれ、自分のことばかり言って‥」

しゅんとした声になってしまった恋人の背中をそっと撫でた私は、

「いいんだよ。そうして思うままに話して貰えると、本当に嬉しくなるものなのだよ。私は和也のことを知りたくて堪らないのだから。」

それは嬉しい言葉だったのだと教えた。


我を忘れるほどの歓びを得たのだと言った恋人を離したくはなかったが、かつて大切にしていた者が鎖で繋がれていると知れば、助けてやらねばと思うのが人の心だろう。

私の言葉に小さく頷いた身体をそっと離す。


「和也。よく聞いて欲しい。私は君のことが愛おしくて堪らない。しかし智が囚われていると知り、助けてやらねばと思ったのだ。未練などでは無く、かつて愛した者の苦境を見捨てられない‥そんな私を許してくれるかい‥?」

決して心が揺らいだりはいないのだということを、胸の痛みを感じているような表情(かお)する和也にわかって欲しいと願うばかりだった。


するとじっと私を見つめていた薄茶の瞳が僅かに揺れ‥

「わかってる‥つもりなんです。雅紀さんはお優しいから‥智さんのことが心配で堪らないんだろうって。もう好いておられる訳じゃないって、そう言って頂いても‥怖くて‥。」

和也は不安に揺れる心を‥曝け出した。

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