愛慾の鎖ーInvisible chainー【気象系BL】
第9章 愛及屋烏
和也side
身を裂くような痛みが全身を駆け抜ける。
いずれは‥
覚悟はしてたつもりだった。
でも実際に受け入れるとなると、想像以上‥いや、想像を遥かに超える痛みに、身体が悲鳴を上げそうになる。
好きな人と一つになる悦びを感じたい‥
でも‥、無理っ‥
裏腹の感情が本能的に痛みから逃れるようとする。
なのに俺を強く抱き締める腕はそれを許さず、俺の中に押し入って来る。
「やあっっ‥はぁっ、あぁぁっ‥」
俺は叫びとも区別のつかない声を上げ、見開いた両の目からは堪えきれなかった涙が零れた。
でもそれは、決して痛みからだけじゃない‥
激しい痛みと、息が詰まるような圧迫感の中に、雅紀さんの確かな愛が感じられて‥
俺は雅紀さんの腕を掴んだ手に力を籠めた。
「‥もう‥これ以上辛くはなるまい‥。和也、私を見ておくれ‥」
汗と涙で濡れる頬が撫でられ、唇ではなく、その端に暖かい物がそっと触れた。
本当は‥例え息が出来なくたって、唇に触れて欲しいのに‥
俺は硬く瞑っていた瞼を僅かに持ち上げる。
そして歪む視界の中に、愛しい恋人の笑顔を見つけた瞬間、堰を切ったように涙が溢れ出し、
「ああ‥、私たちはひとつになったのだ‥」
雅紀さんと繋がれたことがまだ信じられない俺の疑問に答えるように、雅紀さんの目が細められた。
嬉しい‥!
愛する人とこうして一つになれることが、こんなにも幸せなことだなんて‥
知らなかった‥
気付けば、雅紀さんの腕を掴んだ手を首に回し、今度は俺の方から雅紀さんの唇に口付けていた。
たどたどしく突き出した舌で雅紀さんの咥内を蹂躙した。
好き‥
愛してる‥
こんなにも、貴方を‥
重ねた唇に、心の声を乗せて‥