愛慾の鎖ーInvisible chainー【気象系BL】
第9章 愛及屋烏
「どうしたんだい?今日の和也は随分と大胆なようだが‥」
揶揄うように言って、それまで内腿を撫でていた手が胸元へとずらされ、俺の胸の先を指と指の隙間に挟み込んだ。
「わか‥な‥ぃ‥けど‥、でも‥」
一つだけ分かってるのは‥
俺に触れているのが、雅紀さん…貴方だから‥
「ん‥はぁ‥っ‥」
胸の先を捏ねられ、跳ね上がった身体が湯船を激しく波立たせた。
「このままここで和也を愛したいところだが、それではお互い茹蛸になってしまうね‥」
それに‥と付け加えて、俺の首筋に顔を埋めて、寄せた唇で俺の肌を強く吸った。
「んんっ‥」
首筋に感じた小さな痛みにすら、身体が震える。
「和也の可愛い声を独り占めしたいからね」
俺の髪を濡れた手でするりと撫でてから、ぴたりとくっついた身体を少し離すと、俺を両腕に抱いたまま風呂から上がった。
「あっ‥」
「どうした?」
「い、いえ‥、何でも‥」
湯の中だったから気にならなかったけど‥
天井を向いて起立した茎が、俺の慾の深さを表しているようで‥
俺は気恥ずかしさのあまり、雅紀さんの腕の中で膝を擦り合わせた。
「こらこら、暴れると落ちてしまうよ?」
「だ、だって‥」
こんな状態の茎を雅紀さんの目の前に晒しておくよりは、落とされた方がよっぽどましかもしれない‥
「くく、今更恥ずかしがる間柄でもあるまい?この間は私の口の中で果てたと言うのに‥」
「ま、雅紀さんったら‥。もう、知らないっ‥」
俺は脱衣所に出た瞬間、雅紀さんの腕から飛び降りると、用意された手拭いで濡れた身体を拭き、雅紀さんに背を向けたまま寝巻を着込んだ。
「く、くくく‥、本当に和也は可愛い恋人だ」
背中越しに笑いを感じながら、俺は着て来た着物を一纏めに胸に抱え込んだ。
そして振り向きざまに、
「私は先にお部屋に戻ってますから、どうぞごゆっくり‥」
深々と頭を下げ、逃げるようその場から立ち去った。