• テキストサイズ

愛慾の鎖ーInvisible chainー【気象系BL】

第2章 暗送秋波


雅紀side


なぜそのような目で私を見るのだ‥。


あの青年との惜別の涙で睫毛を濡らしていたであろうに、振り返って私を見つめる瞳には情欲の焔を揺らめかせている。


触れた頬は哀しくなるほどに冷たく、重ねられた指の先まで冷えきってしまうほど‥君は窓辺で、叶わぬ愛を囁きあっていたというのか。


いつも私の口づけを誘うように伏せられていた瞼は、恥じらいゆえではなく‥己の偽りの心を見抜かれぬため‥‥



「どうして目を逸らす?私の帰りを待っていたのであろう?・・・・それとも、私以外の誰かを想っていたとでも?」

私の口から出た思いもよらぬ言葉に、智は一瞬大きくその瞳を揺らした。


君の頬に愛おしげに白い指を這わせていたあの青年のことが脳裏をよぎったとでも‥?



なぜ‥私を欺いた‥



「違っ‥、そんなことは決して‥‥」



なぜ‥偽りの愛を囁こうとする‥


本当に私に恋心をいだいてるというのなら‥



「ならば何故そのような・・怯えた顔をする?」


私は‥この身を焦がすほどに君を愛おしいと思っているのに。

身体中を巡った恐ろしい毒は、愛おしさを狂気に変え、私の脳はその痺れに侵された。


あの青年の手が包んだ頬から私のそれが滑り落ち、智の細い首へと‥

紺絣の袖から伸びた白い手が撫でた智の首へと滑らせると、胸を引き裂くような哀しみが‥身を焼き尽くしそうな嫉妬が、私の指先を支配した。



君を苦しめたいわけじゃないのに‥



空気が足りなくて私の手を外そうと掴む君の指先は白く絡みつくけれど、それも徐々に力を失い、縋るように見つめていた瞳はゆっくりと隠されていった。




‥‥君がいけないんだ‥



華奢な身体を崩しながら霞ゆく意識の中‥君は救いを求める。

そして私への慕情を囁くためにある赤い唇は

違う男の名を呼んだ。



‥‥違う!


私はそんな名ではない!


そんな‥‥



私は肩から滑り落ちた半纏の上に、折り重なるように崩れていった智の寝巻きの胸もとを裂くように開いて‥掻き抱くと


晒された白い胸の上で柔らかく存在を主張する果実に歯を立てた。

/ 534ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp