愛慾の鎖ーInvisible chainー【気象系BL】
第6章 籠鳥恋雲
智side
捨てられた‥?
捨てたつもりでいた僕が、捨てられた‥?
でもその方が、雅紀さんにとっては良かったのかもしれない。
だってあの人に悲しい顔は似合わないから‥
あの人には太陽のように暖かに笑っていて欲しい。
僕のためにもう苦しんで欲しくない。
僕は一旦瞼を閉じると、ふっと息を吸い込んでから、再び瞼を開いた。
そこにはさっきまでの、目の前にいるこの男に怯えているだけじゃない、ただ慾を欲しがる娼婦のように男を誘う色を宿した。
「ほう‥、あいつに捨てられたと知って、箍(たが)が外れたか‥‥」
潤の冷えた指先が僕の顎を掴み上向かせる。
「ならば俺も存分に愉しませて貰おうか‥」
ゆっくりと、天窓から差し込む月明りを遮るように潤の顔が降りてくる。
でも吐息がかかる直前の所でぴたりとその動きを止めてしまう。
「気が失せた」
苦々しく呟き、そして僕の顎から手を解くと、すっと立ち上がり、僕に背を向けてしまった。
「どうなさったのです?」
そのまま部屋を出て行こうとする背中を、僕は小首を傾げて見上げる。
僅かに開いた唇の隙間から、赤く熟れた舌先をちらちらと覗かせて‥‥
それでも何も答えようとしない潤に焦れた僕は、足首に絡まる鎖ををじゃらりと響かせてその場に立ち上がると、それまで着物の襟を掴んでいた手を解いた。
そして羽織を肩から滑らせると、床にぱさりと落とし、続けて腰紐を解いた着物も床へと落とした。
何も身に纏う物がなくなった僕は、恥部を隠すことなく月明かりの下へと晒した。
「何のつもりだ‥」
「何のつもりもございませんよ‥」
僕は潤の足元に跪き、前を向いて僕を見ようともしない潤を見上げたまま、下衣の前を開いた。
「気が失せた言っただろう‥」
「ふふ、僕にはそんな風には見えませんでしたが‥?」
一瞬見せた、あの戸惑いの表情‥
あれは自分の感情に疑問を感じているような、そんな表情(かお)だった。
僕は開いた下衣の隙間から、潤の中心を取り出すと、躊躇することなく口の中に納めた。