• テキストサイズ

愛慾の鎖ーInvisible chainー【気象系BL】

第6章 籠鳥恋雲


「食事が終わったなら、お話はここまでだ。夕食の前に替えの着物を持ってきて上げるから、それまで大人しくしてるんだよ?」


澤が、よいしょとばかりに膳を手に立ち上がる。


本当はまだまだ聞きたいことは沢山ある。

でも急いては、流石の澤だってきっと怪しむだろう‥


僕は澤に礼を言うと、薄い着物の上に潤の羽織を着込み、再び壁に背を凭せかけた。


すると、満腹のせいなのか、それとも背に感じる心地よい温もりのせいなのか、瞼が重くなるのを感じた。


「おやおや、まだまだ子供だねぇ。まあ、今のうちに好きなだけおやすみ。坊ちゃんがお戻りになったら、ゆっくり休むこととも叶わないだろうからね‥」

「‥うん、そうするよ‥」


あの男が帰ってきたらきっとまた‥


昨夜のことを思い出し、身体が俄に震え出す。


またあの液体を飲まされたら‥

あれを飲まされると、急に胸が苦しくなって、身体が宙に浮いたようにふわふわとして‥何も考えられなくなってしまう。


もう二度とあの液体を飲みたくない。


でも、結局あの男の前では平伏すしかない僕には、それを拒むことすら許されてはいない。


やめよう‥

どれだけ考えたって、僕には成す術なんて無いのだから。


そうだ‥

あの味を思い出しながら眠ろう。

甘くて小さな、あの幸せな味を‥

もう僕の口の中で溶けて無くなってしまったけど、僕に幸せな時間をもたらしてくれるあの味だけは、忘れることは出来ない。


そして彼‥翔君のことも‥


嘘をついて学校を休んだと言っていたけど、もし潤に分かったら‥


心配だな‥


尤も、僕が心配したところで、僕は助けて上げることすら出来ないのだけれと‥


会いたいな‥

さっき別れたばかりなのに、もう翔君に会いたくて堪らないよ‥


僕は重たくなった瞼を擦り、いつの間にか高く昇った太陽が燦々と光る空を見上げた。


君も見ているだろうか‥


僕と同じ空を‥‥


ねぇ、翔君‥
/ 534ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp