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愛慾の鎖ーInvisible chainー【気象系BL】

第2章 暗送秋波



‥君は私を待っていてくれただろうか‥


窓から洩れる僅かなランプの灯りを求めて、そこに目を向けると‥‥

窓枠から身を乗り出すようにしている智の姿と‥


その細い首に指を這わす別の誰かの白い手が目に飛び込んでくる。

そして自分の首筋をなぞる手を包み込むように取り、頬を寄せる君。


逃げられない鳥籠の中から哀しく啼く金糸雀(カナリア)のような刹那さを漂わせ‥



私は幻でも見ているのだろうか‥‥。



闇の中で人目を忍び、手を取り合う2人はまるで‥

君が咄嗟に隠した洋紙‥私の胸を突いた痛みの正体はこれだったのか‥?


私を心を摺り抜けていく君の心の先にある秘め事とは‥

その白い手の持ち主だったというのか?



遠く離れた庭木の蔭に立つ私の姿に気付かない2人は、霞のかかった月明かりの下で手を取り合ったまま‥どんな言葉を囁きあっているというのだ。



白く伸びた手を辿り、その持ち主を見れば‥


夜の闇に身を隠すような紺絣の着物に錆利休のような袴で身を包んでいて‥童女のような面立ちをしてはいても、それは紛れもなく青年の服装で‥

磁器のように透明な肌をした艶やかな黒髪の青年。


思うがままにならない哀しさを秘めたような瞳で、身を乗り出す智の頬にまた手を伸ばす。



‥‥何ということだ。


これはどんな裏切りだというのか‥



愛しい者の許されざる背徳の行為は、胸の痛みを大きくし、そこに恐ろしい毒を染みこませた。


その毒は瞬く間に身体中を駆け巡り、私を狂気へと導く。


愛するが故の‥

この身をも滅ぼしてしまいそうなほどの狂気。




‥‥智‥



背徳の蜜の味とは‥どんなものだろう。



味わってみるがいい‥



私とともに‥



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